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西武残酷物語 [鉄道]



1979年に出た本で、鉄道と流通の両西武グループ批判の本としては早い時期のものである。
ほとんどの内容は他の本にもあるものだが、他の凡庸な経営本にない独自の情報を含んでいる。その最たるものが近江鉄道の堤清の位置づけと、滋賀県政との癒着問題を書いたものだ。

(西友が八日市市の再開発に乗じて商店街をつぶし、一等地に店舗を作ったことについて)P18から
実は、この一連の動きに貢献したのが武村(正義)滋賀県知事だった。いかに大衆がおろかであろうとも、ここまできて西武グループと武村知事・滋賀県政とのゆ着(ママ)ぶりを気づかぬはずはあるまい。八日市商店会の面々は、武村知事と真っ向から対決する構えを見せ、知事に対して
「市を売るのか」
との大デモンストレーションを行ない、ゆ着ぶりを追及した。これに対し、知事のほうは逃げの一手に終始。注目された割りに何の解決策もないままである。
ここで興味深いのは、世論に反してまで、なぜ武村知事が商店街潰しをし、しかも市庁舎の隣のカド地に西友ストアを持ってきたのかというナゾである。
武村は、かつて八日市市長であり、県知事になる前、西武との関わりは深かった。選挙の際に票も金も世話になったという。八日市市が西武一色に塗り変わった一事を見れば明らかである。今後、近江鉄道への県費援助や種々の開発許可など、武村が西武に有利な”事業”を起こすことは間違いないだろうと、地元民の多くが語っていた。また、「目的のためには手段を選ばない」西武商法は、これからも滋賀県のあちこちで猛威を振るうことであろう。いよいよ”強い西武”に兄弟たちの結束が固まってきているということだ。

ムーミンパパこと武村正義は自治官僚から若き八日市市長、滋賀県知事を経て、1990年代の政界再編期に新党さきがけを作って、細川内閣で官房長官、村山内閣で大蔵大臣に上り詰めた人物である。当時は細川護煕と並んで政界のヒーロー的存在であった。
だがその政界風見鶏ぶりが悪いイメージに転じようとしていたため、否の首相の鳩山由紀夫が新党さきがけを離党して、新党の(旧)民主党を創設したときに「排除の論理」によって民主党入りができず、自らの落選で政界引退に追い込まれた人物である。
本書に書かれたことが事実として読むかどうかは眉唾だが、本書の他の部分は類書のない時代によく取材して書かれており、一面の真実を伝えているのだろう。業者などの癒着などとは無縁に思えた小泉純一郎が政治家の中で人一番堤義明の世話になっていた事実に通じるものがある。政界の一匹狼的な存在はどこかに強いパトロンを求めるものだ。

他に西武グループに関して読むべき本は多い。まず当事者のものから。


西武の大番頭が書いて、当時は直ぐに買い占めにあって入手困難だった本である。

やはり文学者としての兄の本は欠かせない。
当事者が赤裸々に父の悪事を明らかにしたのだから。
最初に書いたのが、自伝そのもの『彷徨の季節の中で』である。
大抵の西武本は堤康次郎の異常な女性関係、家族構成のネタをここから拾っている。

最近になって父の立場から肯定的に見直したのが『父の肖像』である。





外部の著者のものとしては、以下が必読である。

リンクに表示されるテキスト
このころの東京都副知事の書くものは面白かった。天敵の田中康夫によれば、手下の調査記者の情報をまとめただけで、独創性はないというが、これだけ厖大な内容を手際よくまとめて面白く書く能力は評価されるべきだろう。


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