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前原は国土交通大臣として鉄道写真マニアの通弊を打破できるか? [鉄道]

前原誠司が国土交通大臣というのは、多少はサプライズな人事であった。せいぜい防衛大臣あたりにしておくかというラインで、外務大臣にするには安全保障政策が自民党より右よりで微妙というところであった。

「前原は鉄道マニアだから国土交通大臣になった。高速道路無料化も相対視できそう。」
という見方もあるようである。
だが、私は寧ろ前原の鉄道マニアとしての側面には危惧している。
彼が交通全体の中で冷静に鉄道を見て、社会の中でよりよい鉄道のあり方を考えるというような交通政策的な関心を、従来の発言やインタビュー(鉄道趣味の立場からのものを含む)などから窺うことができないのである。そして見えてくるのは、悪い意味の視野狭窄な鉄道写真マニアの立場である。

鉄道写真を趣味とする人の中には、広い興味見識をお持ちの方も多いことを承知の上で申し上げる。
彼等にとって、自分がSLなどの良い写真を取るという被写体への欲望以外には何もないという人も、写真マニアの中には少なくない。イベント列車や復活運転、いわゆる葬式鉄などは、数が増えすぎれば有害無益な存在だと思う。どうして有名撮影地で周りの何百人と同じ構図で写真を撮らなくてはいけないのだろうか?誰かが撮っていてくれれば、記録が歴史に残って十分ではないか?おおよそ学問では先行研究のある分野に屋上屋を架すことほど無意味なことはなく、自己の勉強以外の意味を持たない。
そもそも復活運転やSLの特別運転などがあっても、鉄道写真マニアはあしきフリーライダーである。彼等は列車のきっぷも買わず、運転にかかわるコストも負担せずに、自分のエゴで写真を撮りまくるだけである。それもセミプロ級、ましてやプロのカメラマンともなれば、日本全国自分の車か、遠方ならレンタカーで撮影地を廻るのが常識であって、18きっぷ利用者は写真マニアではマイノリティーである。

前にも書いたが、国鉄常務理事からJR東日本の副社長鉄道事業本部長、副会長、会長となった山之内秀一郎は
「鉄道マニアの興味、知識などは鉄道会社の運営にとって何の価値もない」
と言い続けた。JRのみならず鉄道会社全般の共通認識といっていい。技術系は他として、文系ならばマニアを落として一般人を採用しろというのは鉄道会社の人事の常識である。自分の撮影の都合で臨時列車のダイヤを決めた(ことを周囲に豪語する)JRのマニア社員を私は複数知っている。
鉄道写真にも模型にも興味のない鉄道マニアとして私は言うが、マニアの多くが近親憎悪する川島令三のような考え方こそ鉄道会社にとって(彼の意見に賛同するかどうかは別として)意味がある。

とにかく日常の鉄道会社がビジネスとして存続し、交通体系の中でより良い位置づけを得るかという問題意識の抜けたマニアは実に多い。鉄道写真マニアだけでなく、乗り鉄にも多い。
青春18きっぷのために県境の閑散区間の普通列車を増発しろという類である。上越国境のように、明らかに18きっぷのために普通列車の本数を増発し、ボトルネックを解消するということもないわけではないが、鉄道会社が恩寵としてやっていることであって、無理に要求することではない。静岡県内の東海道新幹線停車問題とはわけが違う。
初めて一畑電車(例に出して悪いが)に乗ったときに、私は昼間の本数が1時間ヘッドで、線形の割に速度も遅いことに半分義憤を覚えた。こんなことでは自動車に勝つことはできないし、交通機関としての意義を失って廃止されるのがオチである。
そんな話しを隣のマニア親子にしたら
「本数が少なくてのんびりゆっくり走っていてくれた方が、旅行の楽しみになっていいんですよ」
そういう見方は間違っている。1回かそこら乗るだけの旅行客は乗り鉄は鉄道の存続にとってびびたる意味しか持たない。売上の大半は沿線に住む毎日の通勤通学客が高い定期運賃を払って集まっているものである。沿線の人々にとって便利で使いやすい鉄道でない限り、意味はないのである。
観光鉄道、欧米のような保存鉄道という選択もあろう。
だが欧米の保存鉄道は、厚い篤志家の寄付(優遇税制に支えられて)と週末のボランティアによって支えられているのである。また黒部峡谷鉄道やスイスの登山鉄道のように高い運賃を取って、かつ多くの旅客を繁忙期に集めて初めて観光鉄道は成立するのである。大井川鉄道だって、SL列車は観光バスの団体を山ほど誘致して現状維持ができているのだし、大株主の中部電力が有形無形の支援を続けて成り立っているのだ(創立時の筆頭株主が宮内大臣、すなわち天皇家の個人財産であるなど、この鉄道は一筋縄ではいかないようだが)。

前原は当面はダム問題(吾妻線の日本一短いトンネルを遺すためにダム反対を決断したとの見方もあるが)と高速無料化問題、公共工事削減に注力することになって、交通政策そのものには関われないかもしれない。
そうなると注目されるのが交通問題担当の辻本清美副大臣の出番である。
(週刊金曜日に「辻本副大臣でピースボート国有化、高齢者をクルーズに無料御招待」という内輪ネタ漫画があって笑った)
ピースボート自体、規制と因習だらけの海運業界に革命的に参入した驚異的な存在である。ボロ船の故障問題など、さんざん世間を騒がせながら、ここまで安定して世界一周航海を継続していること自体、どれほど関係機関への根回し、関連法規などの間隙を縫うような術策に長けていることが想定される。
こちらの人事の方を注目すべきかもしれない。

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