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燃油サーチャージで損した人、得した人 [航空]

今日3月31日を最後に、国際線の燃油サーチャージは大幅に値下げされる。まだ7月までなくなるわけではないが、旅行経費の中での比重が大きく下がる。昨年秋以降の原油と航空燃料の値下がりを反映した形である。
JALの値下げ額だけ例として上げる。

日本 - 韓国線 2,500円 ◆200円
日本-中国線 6,000円 ◆500円
日本-台湾・香港線  6,000円 ◆500円
日本-ミクロネシア線・ベトナム線・フィリピン線 7,500円 ◆1,000円
日本-タイ・シンガポール・マレーシア線  12,500円 ◆1,500円
日本-ハワイ・インドネシア・インド線  14,500円 ◆2,000円
日本-北米(除くハワイ)・カナダ・メキシコ・ヨーロッパ・オセアニア・中東線  22,000円 ◆3,500円
日本 - ブラジル線 26,000円 ◆6,500円
JL便のニューヨーク/サンパウロ間 6,000円 ◆3,000円
JL便のバンクーバー/メキシコシティ間 2,000円 ◆500円
JL便の欧州(アムステルダム-マドリッド゙線を除く)・オセアニア内(一部国内区間を含む)  1,500円 ◆300円
JL便のアムステルダム-、マドリッド線  2,000円 ◆500円
JL便の上記以外のハワイ・北米・アジア内路線(一部国内区間を含む)  400円 ◆100円

最高が昨年の7月~10月ころであって、欧米往復で60000円以上払わされていたことを考えると、隔世の感がある。日本発以外の航空券ではここまで高額のサーチャージは取られないか、運賃自体に込みになっていたこともあるが、運賃総額はそれなり(円換算で万円単位)の高額ではあった。

この間、海外旅行需要は多いに減退した。
だが私の考えでは、普通に利用するなら多くの移動の場合は、それほどの負担増にならなかったのではないかと思う。
例えば昨年3月ころで、も欧州往復が40000円台の航空券が欧州系航空会社でたくさん出ており、サーチャージ込みの額でも100000円を下回る額だった。サーチャージという概念が存在しなかった5年以上前でも、日系や欧州系で、欧州往復の航空券は80000円を下回る額が出たことはない。そして、アジア系の南回りや韓国経由の航空券でも50000円を下回ることはなかった。
繁忙期で見ても、昨年や一昨年の夏休みのピーク時や年末年始でも、エコノミーで込み250000円程度という大枠は変わらず、旅行需要が減退した分、却って(運賃クラスの)安い航空券が入手可能となったりした。
アメリカでも東海岸(それもフロリダまで)往復で2万円台かそれ以下のものも、米系各社で登場した。
東南アジアでも、ピーク時は片道のサーチャージが20000円程度に達したが、その分、日系米系アジア系変わりなく何と航空券部分が10000円を下回る運賃が登場した。込みの額でも50000円程度であり、それ以下の運賃というのは従来からUA、NW(日本発が夕方で現地着が深夜、現地発が早朝となり、日本人にとっての利便性が極めて低い。私は好きな便だけど)の閑散期のたたき売り運賃やビーマンバングラデッシュ航空パキスタン航空など信頼性に乏しいものしかなかった。
中国線のサーチャージはピーク時でも片道10000円を超えなかったし、もともと距離の割に割り引き運賃が少ない(日系だとツアーしか現実的な運賃がなく、正規割引は普通運賃やIATAPEX運賃と変わりない)ので影響は乏しい。
韓国線に至っては、サーチャージ額はツアー料金の誤差(ホテルのクラスや時期でいくらでも変動する)の範囲でしかない。

もちろん昨年夏の欧米往復60000円を超える(日系で最大片道36000円)サーチャージは、あまりに非現実的な額であった。だが、その値上げは昨年4月ころから早めに情報が普及し、夏休みの旅行に際しては早めの発券をすることで、サーチャージ額を片道20000円程度に抑えることが可能であった。ヤフーなどで見た目の格安運賃で一般利用者を釣る悪徳業者を除いては、どこの旅行代理店も早めの発券には(ちゃんと要求すれば)対応してくれた。

それではサーチャージ騒動で大いなる被害を被ったのは、いったいどういう人たちであろうか?
それは、意外と狭い旅行のやり方、行き先の範囲にとどまるというのが私の考えである。

一つはハワイなどビーチリゾートやオセアニア行きの航空券である。こういった地域には極端な安値の格安航空券があまり出ないか、もともとの運賃が安値なので、サーチャージ値上げ分を本体運賃の値下げで対応することができなかった行き先である。だいたいハワイ5日間やケアンズ4日間でホテル込み39800円とかのツアー料金からは値下げのしようがない。
そこで私はこの原油高騰が長続きして、ゴールドマンサックスが昨年に主張したように1バレル200ドルなどをつけるようになっていたら、きっとツアー10000円などの安値で、実際には航空会社が旅行代理店にバックマージンを渡すことで、それ以上の商品券がもられたり、高価なホテルの滞在が可能になるだろう、と私は奇妙な想像をした。
(いくらマネーゲームでも、そこまで高値では世界の経済が成り行かず、従来はコストが割高に過ぎて夢想的と思われていた他の代替エネルギーの殆どの運用が採算が取れるようになり、産油国や石油メジャーにとっては却って損をすることになりかねないから、そうはならないと私は主張していた)
だが事はそうは進まなかった。
もともと薄利多売か、オプショナルツアーやホテルのランクアップ(ホノルルだと、ヒルトンやロイヤルハワイアン、ハレクラニ辺りだと個人旅行で個別に手配した方が安い。ただしハワイの場合は事情が特殊で、高級なスイートルームなど上級客室の殆どをJTBとJALパックで押さえていて、ツアー客はけっこうUGなど個人客以上に良い目にあうこともあるらしい。)で儲ける仕組みができているので、この機会に旅行業界も航空会社も利益を回収しようとしたのである。
ハワイと同様の現象は台湾や韓国でも見られた。従来はツアーで込み込み2万円や3万円などの安値だから国内旅行ではなく海外旅行としていた層が離れたのである。

もう一つは北米のNY直行、ロサンゼルス往復などの行き先の、閑散期激安運賃の消滅である。
サーチャージのない時代から、例年10月を過ぎるとこれらの路線では、ロサンゼルス往復19800円やNY往復25000円などの超激安航空券が登場するのが、1990年代半ばからの常であった。ニューヨークは日本からの往復が6700マイルにも達し、殆ど日本から直行便が飛ぶ限界の長距離路線なのに、これらのとんでもない安値の運賃が出ていたのである。
日本国内だと東京から名古屋や大阪に行く旅行コストと大して変わらずに何万キロもの移動ができるのだから傍目には異常事態であった。しかも、韓国台湾旅行やビーチリゾートと違い、一部の航空マニア、旅行好き、マイルヲタ以外には、あまり知られることはなかった。
(だいたいロサンゼルスの魅力はディズニーランド以外にはあまり一般の観光客に知られていないし、アメリカの大都市全般に治安の悪いイメージが普及しているからである。これはあながち間違いではないが、ここ10年で急速に治安が良くなったことは十分に日本人にPRされていない。そして、ニューヨークはホテル代が高く、割安なツアーの設定が難しい。)
それでいて米系だと膨大なマイルがたまる。ロサンゼルス線の大韓航空などは2006年ころまでBクラスで実質的に加算不可だったが、米系ならどんな激安運賃でも自社で100%加算が常である。
さらに1年に何往復もして上級会員になると、どんどん加速度的にマイルが貯まる。ダブルマイルキャンペーンとかをやっていると、滅茶苦茶なことになる。5万円でフロリダまで往復すれば往復15000マイルは最低ラインであり、周遊券なら2万マイルも夢ではない。5万円くらいで上級会員ならキャンペーン期間中なら5万マイル貯まるなんて普通である。北米1回で有償なら数十万円する東南アジア行きのビジネスクラスの特典航空券が取れたる、3回なら欧州に有償200万円のファーストクラスに乗れる。投資額の5倍から10倍の回収ができて当然というのが北米路線の常だった。それでいてUAの1kなどは曾てはVIPに近い待遇を受けられた。
以下の有名なサイトの古い記事を読んでみよう。

マイレージ獲得大作戦
http://www.pat.hi-ho.ne.jp/m-inoue/ffp/

アメリカ本土への激安航空券の登場には複数の複雑な要因が左右していた。
一つは日本からアメリカ本土を往復する太平洋路線のビジネス需要が巨大であり、西海岸で往復30万円以上、東海岸で50万円の高価なビジネスクラスの航空券がよく売れるからである。
JALのニューヨーク線が一番極端な事例である。バブル期には747ー200Bの最終の長距離型がエグゼクティブエクスプレスと呼ばれ、最後方のEコーパントメントしかエコノミークラスの座席がない(つまり100席以下)か、時にファーストクラスかビジネスクラスしかない異常な座席配置で運行されていたのである。当時のビジネスクラスの座席は今のような電気仕掛け満載のフルフラットの複雑なものではなく、簡単にエコノミーの座席と交換できたからである。もっとも当時のビジネスクラスの座席は、今のプレミアムエコノミーの方がましとも言えるレベルであった。ファーストクラスも特別な配置が取られ、AコンパートメントとBコンパートメント、二階席に及ぶ広大なもので、40席以上もあった。いまではどんな航空会社でもファーストクラスが設置されていても10席程度であるから、とんでもない上級クラスの需要であった。747ー400の導入後も特別な座席配置が続いた。太平洋路線向けのパンナムの747SPやL1011ー500も、機内の半分以上の空間を上級クラスが占める、異常な座席配置となっていた(当時の大西洋路線の747-100の座席配置は分からない)。747在来型の時代には日本からアメリカ東海岸往復は航続距離がギリギリで、荷物や旅客の制限が必要だったから、上級クラス中心で座席数を減らした結果とも言えるが、需要がなければこんなことはできない。
北米路線は高価なビジネスクラスやファーストクラスの航空券で利益を出せるので、エコノミーの航空券を安値で出しても採算が取れるのである。
米系航空会社の厳密なコスト計算のもとでは、エコノミーの残席は売れ残ると二度と販売できない生鮮食料品のようなものであり、どんな安値でもエコノミーの席を売ってしまわなければならないものである。捨ててしまう(空席のまま飛ばす)よりは、一円でも取って人を乗せた方が利益が上がるのだ。

2つ目の理由は成田発のロサンゼルス線に最近までいたアジア系航空会社の存在である。今でも大韓航空がロサンゼルス線をソウルから成田経由で飛ばしている。ちょっと前まではTGタイ国際航空もいたし、マレーシア航空もいた。これらの航空会社が赤字覚悟でエコノミーの航空券を日本発でたたき売りしていたのである。
もともと航空機の航続距離が短かった時代にはアジア各地からアメリカ各地にノンストップで飛行機を飛ばすことなど夢であった。
ジェット時代になってもDC8の初期型では東京からハワイまでも直行できなかったし、DC8-62でもアメリカ西海岸から冬にはやっとの思いで貨物や旅客を制限して日本まで飛べる状況だった。747の時代でも文句なくロサンゼルスから日本に飛ぶには200の後期型が必要だったし、冬期のNY線の安定運行は747-400の好燃費と航続距離が必要だった。
そこでアジアの各航空会社はアメリカに一番近い東京に寄港して、そこから北米に向かうのを常としていた。自国と日本との間の乗客も多いので、日本からも新しい旅客を乗せないと採算が取れないし、日本の航空当局としても日本人の太平洋線の利用機会が増えるのは歓迎であり、以遠権をアジアの航空会社に与えた。
1970年代から羽田空港の発着枠はプラチナ化し、その混雑は成田空港ができても変わることはなかった。もはや新しい以遠権を他国の航空会社に与えるのは非現実的となった。
大韓航空も昔は東京、ホノルル経由のロサンゼルス線が唯一の北米路線だったが、今や日本航空を大きく超える北米路線網を誇り、ロサンゼルスにもソウルから一日4往復も便を飛ばしている。マレーシア航空やタイ国際航空も日本を経由しない北米直行便を飛ばすに至った。
だが東京経由は一種の免許維持路線であり、一度撤退すると二度と開設できないことを承知しているので、彼らはなかなか廃止しようとはしなかった。大韓航空は今でも廃止していないし、他の二社も自国からの通し旅客を、それほどのぞめないにもかかわらず、路線を近年まで維持した。
だが普通の運賃なら日本の航空会社でもアメリカでもない便に日本人は乗ろうとはしないし、大韓航空の事故の多さは日本以上に北米で悪評高く、アメリカ人に利用は全く望めない状況であった。
残る選択肢は徹底的に安売りすることだった。空席で飛ばすよりはましである。
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