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吉乃翔を回顧 レストランの採算性について [食事]

(以下の記事は2007年12月の再録です。吉乃翔は銀座に移転してランチバイキングをやめました)

午前中に用事があり、思ったより早く済んだので、久しぶりに吉乃翔に昼食を食べに行く。
(どんな所か知らない人は以下を参照)

http://www.umaimise.co.jp/kichinosyo/lunch.html
http://www.asahi-net.or.jp/~qt2h-nkjm/tabeho/chuo2.htm#kitinosyo

賛否両論あるけど、料理だけで言えば和食系の食べ放題では文句なしに日本一であろう。盛り切りの容器も、黒色でそれなりの高級感はあるし、一度に多種類を取れるのは良い所。
さんざん論じられているように、原価比が外食業界では異常な領域に達している。さんざん同業者が視察に訪れているようだが、自分の所では無理と諦めて帰るようである。
・居抜きで開店したので、店舗の初期投資がかかっていない。
・狭い店舗を最大限に利用。
・採算は夜の宴会で取れる。
(これはホテルのランチバイキングでも同じ)
・店員の数を削減し、案内、配置までパターン化。
・味付けは料理人の気合い、腕の問題であって、コストとは関係ない
何より、これだけマスコミに取り上げられていながら、料理の劣化、コストダウンが見られないのが驚きである。最初は客引き目的で、値段からは驚異的な内容を誇る状態のランチバイキングは多いが、あるていど時間が経つと、投資の回収に向かうためか、高い食材ばかり取る(上に食べ残す)悪質な客のためか、ほどほどの内容になってしまうか、短期間でバイキングを止めてしまう店も多い。
店内は狭いし、相席で最後の一席まで詰めることには好き嫌いがあろうが、食べるだけ食べたら、グズグズせずに店を出るというスタンスは潔いし、品川プリンスのハプナ辺りを占拠している有閑マダムが定着しないのはすばらしい。若いサラリーマン、OLが殺伐と、しかしうまそうに食べているのは、独特の雰囲気である。男性が一人で来ようが、周囲から何とも思われない雰囲気は快適。
店員のサービスに文句を言う意見はあるが、この手の店では驚異的に良いレベルだと思う。少なくとも応対はどんなファミレスにも勝っているし、慇懃無礼な例を除くと、飲食店でこれ以上のレベルの応対を望むのは、けっこう酷だと思う。

以前に来たときは、2時前になっても行列が解消しないのに驚いたものだが、12時台は意外と空いていて、直ぐに入れた。不思議に思っていると、13時になると理由は知れた。
13時から蟹足が出て、それ以降に入場した客のみ取れるシステムになっているのである。ただ個人的には全く価値を見いだせない。1000円で蟹を出しているのは驚異的ではあるが、原価の都合があって、輸入物の冷凍の、かなり程度の悪い蟹しか出すことはできないし、味が抜けた滓のようなものである。
そんなものに期待するくらいなら、多種類の刺身、鰹の叩きやカキフライ、こった煮物などを食べた方がましである。さすがに高級店、漁港などの最上位のものには質は劣るが、トータルで5000~10000円を取る店(典型的にはホテル内の)には遜色のない質のものが提供されている。
一部、蟹のシステムについて、そのことを注意してもらえなかったことを店長に向かってクレームしている中年の母娘がいたが、文句を言うほどの価値があるのかと思う。

話を転じると、帰りに神田神保町に寄って、最近日曜日~火曜日に開催日程の変わった古書会館の「新宿古書展」に行く。神田古書会館は金土曜と思いこんだ客が多いためか、最終日なのに空いている。おかげでけっこう収穫多し。一例を挙げると
門脇禎二『「大化改新」論』を500円
井上光貞『わたしの古代史学』を400円
坂元義種『倭の五王 空白の五世紀』を500円
P・コーエン
『知の帝国主義 オリエンタリズムと中国像』平凡社を800円
で入手した。

前半の話と関係するのが
辻嘉一・小野正吉『食の味、人生の味』柴田書店・1982
である。料亭「辻留」の先代主人とホテルオークラの総料理長の対談本だが、業界向けの出版社から出ていることもあって、けっこう料理業界の裏話が出ている。
・ヨーロッパの5つ星(か準じるクラスの)ホテルのサービス、料理は凄いが、丼勘定で、意外と利益が出ていないし、300室以上の客室、1000人の宴会を運営することができない。
・ホテルオークラを作る際には世界中の一流ホテルを視察したが、一番参考になったのは、シカゴのドレーク、ラスベガスヒルトンなどアメリカの巨大ホテル。コスト計算、大量の料理をいかに効率よく盛りつけ、配膳するノウハウが半端ではない。ただやりすぎると出来合のものばかり使って、味が落ちてしまう。二級のホテルではその例が多い。
・採算点のソロバン計算は重要だが、1000人クラスの宴会でも長年の経験による勘が重要。
・立食宴会のビュッフェの料理は、来客、ホテルの双方にメリットがある。1000人の宴会でも、値段の高いものは数量を抑えるなどの策を取る。

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