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日本はなぜ五輪でふるわないか [海外事情]

(筆者個人はスポーツの成績を国民国家単位に評価すること自体に反対しています)

本章を書いている時点で、日本の金メダル獲得数は2個で、4個の北朝鮮どころか、ベラルーシやウクライナを下回る勢いである。銀銅を含めた総メダル獲得数で議論する向きもあるが、サッカーやテニスの世界ランキングか、一対一の対戦でない点でもっと厳密なアルペンスキーのワールドカップの年間王者(各種目のクリスタルトロフィーと、全体の大トロフィー)を選出するポイント計算法あたりを参着すべし。

要因としてはいくつかが考えられよう。
第一に言われるのは中国、韓国の国家的なメダリスト育成政策との格差である。アメリカのナショナルチーム強化策も指摘される。だが、これらは資本主義国に対する社会主義国の体制の優位を主張するためのソ連東欧諸国などのかつてのスポーツ政策の猿まねである。国家の資源を国際的に目立つものに集中投入するのはソ連の宇宙開発と同じである。東西ドイツ統一の折には「統一ドイツは五輪メダルで世界一となるだろう」という議論があったが、東ドイツがドーピングなどやりたい放題だった反動か、未だ達成されていない。
第二に、メダルの数を稼ぐにはサッカーやソフトボール、野球(もう公式競技から外れた)なんて団体競技はどうでもよくて、世界的な競技人口の割にメダル数が多く、科学的に選手育成が可能なマイナー競技のボートやセーリング、ウェイトリフティング、フェンシング、射撃、アーチェリー、馬術、自転車などに注力するという中国韓国北朝鮮、開催国のイギリス、ニュージーランド(ボート)の政策は天晴れである。日本の体育教育が小学校の段階から球技に偏っており、スポーツの素質ある選手がメジャー競技に埋没してしまうとの論ももっともである。

あまり指摘されない第三の面が重要だと思う。それは学校スポーツと企業スポーツによって支えられていた過去の日本のスポーツ体制の衰退である。
学校スポーツというのは建前としての平等社会のアメリカ流の発想であり、階級社会としての欧州には相容れない。欧州のサッカーなど、学校教育から締め出された下層階級の若者の憂さ晴らしの手段にすぎない。
だが日本のベルリンオリンピックあたりでの成功(今より遙かに競技数が少ない中でのメダル数は過小評価できない。リーフェンシュタールの記録映画にどれだけ日本人が露出していることか)は戦後に引き継がれる。
学校スポーツというと、甲子園のように打算ない高校生の純真さばかりが強調される。だが、それは日本の現実においては、企業丸抱えの終身雇用社会を背景とした企業スポーツとの関わりなしに殆どの競技は考えがたい。プロ野球は有名企業の広告塔だったし、都市対抗野球を目標としたアマチュア野球も無視できない。高卒でも大卒でも「運動部は就職に有利」との言説とのつながりで学校スポーツは力を持てた一面は否定できないだろう。
今や企業スポーツはどの会社もグローバル化を背景とした経営の合理化で風前の灯火である。もとより高卒の場合はスポーツ枠は終身枠でなく、選手引退は会社退職と同義であることも多かったが(ここは大卒スポーツのラグビーやサッカーの場合と違う。戦後経済の二重構造を象徴している)、それでも指導者、コーチなどの枠は馬鹿にならない。それがなくなりつつあるのだ。(サッカーにしても、プロ野球選手の再就職より難しい面がある。階級社会の欧州で育ったサッカーでは監督コーチに国際資格が要請されるため、多くの有名選手が指導者の道を歩むことを難しくさせている

どんな有力なスポーツ選手にも故障や体力の限界で引退の時は来る。その後の生活の保障が問題なのだ。メダル獲得について、
「報奨金を増枠せよ」
との議論がある。だが、そんなものは300万円が1000万円になったところで、正社員の生涯年収に比べれば微々たるものだ。オリンピックに出たクラスの選手でもマイナー競技では引退後に定職のない者など珍しくない。引退後の生活に保障のない状態で、果たして競技に純粋に打ち込めるものだろうか。
ここでアメリカの例を対照して考えてみよう。アメリカは学校スポーツの国家だが、新卒第一の終身雇用社会ではない。だから選手引退後でもいくらでも人生の巻き返しが可能である。新卒第一主義の日本では、企業スポーツが衰退すれば、たとえ大卒でも選手は正社員としての就職を諦めるか、大学卒業で競技を打ち切らざるをえない。
これらの蓄積はどう評価されるであろうか。

学者の夏休み [海外事情]

都留重人とか鶴見俊輔とかのエッセイや(ハーバード関係者の偏りはあろうが)、あるいは皇太子のイギリス留学回想録とか、あるいはエール大学の朝河貫一関係の史料を読むと、日本の大学研究者にとって意外な事実が分かる。
それは、向こうの学者は夏休みには専門の研究をしない(してはいけない)期間なのだ。
数ヶ月の休みの間、全くの休暇として過ごし、専門の研究には手をつけないということである。
先の二氏が当時でもずば抜けた優秀な留学生であったことは確か(都留重人は首席に近い「大優等」(ラテン語)で表彰されているし、鶴見俊輔も日米開戦で抑留された不利を含めて10代で哲学科を卒業しており、そのまま大学院に残れば22歳で博士号が取れる計算だった)だが、戦前の留学生という言葉から想像するようなガリ勉の様子からはかけ離れた日々だったようだ。長期休暇には必ず太平洋を船で何度も日本に帰って来るし、数年間の修行の日々のようなイメージではない。
オックスフォードに留学して、イギリスの内陸水上交通を研究して修士論文として皇太子(当時は浩宮)は休暇は欧州大陸の各王室の離宮とかを訪ね歩く日々だったと書いているし、朝河貫一も(死ぬまで大学の教員寮に住んでいて、夏休みは居住できなかったのかもしれないが)アメリカ国内の保養地や欧州旅行をしている(ヒゲの寛仁親王に至っては、はっきり「イギリス留学は勉強のためでなくて、欧米社会との社交と場慣れのためだと主張している」)。
戦前の学者でも、中田薫とか三上参次あたりは大学の研究室でしか専門の研究、論文執筆はしなかったようだし、1940年体制ではないが、意外とこの辺りが国際標準かもしれない。

恐らく普通の日本人が持つ留学生のガリ勉のイメージは三者によって規定されていると思う。一つはロンドンの下宿に引きこもりで精神病になった夏目漱石のイメージである。実際には漱石の留学仲間は潤沢な留学費を国費で支給されて優雅な社交生活を送っているのだが、チビのコンプレックスがあった漱石は引きこもって、多額の留学費を全て本代に使ってしまっただけなのだが。
もう一つは1ドル360円時代に経済的に困窮して苦しい留学生活を送った戦後直ぐの留学生の体験である。日経の『私の履歴書』あたりを読むと、周りの学生が遊びに行ったり、帰省したりするのに、自分だけは帰国費用もなく夏休みに居場所がなくて、アメリカ人の同級生の家に一夏身を寄せたなどという話は多い。この辺りの人たちは現在も日本の政財界や学界で指導的な地位にあることが多く、その影響は大きかろう。
最後は単なるモラトリアム(ないし経歴偽装)のための語学留学で海外で勉強もせずに遊びまくる人間へのアンチテーゼとして、現地にありもしない(欧米「市民社会」のようなものか)勉学像を説教のために作ってしまった可能性がある。また、企業や官庁が公費で若い社員を留学させることは今でも多いが、

まあ戦前から夏休みに学者が別荘や温泉などに籠もって本を書くというのはあったようだが、当人の学問の精髄というよりは、小遣い稼ぎか売名のための啓蒙書や長めの雑誌原稿というものが多い(そもそも戦前の学者は高等官試験対策の法律学の本を除くと、講義以外に専門の著書を書くことは稀だった。専門によっては、書けば学士院賞ものだった。)。まあ一夏くらいで著しく進展するような学問なら、それは大したことがないだろう。

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旧聞だが子午線移設を支持する [海外事情]

私はサマータイムよりいいと思う。
東京だと夏に4時ころに明るくなるのはおかしいと思う。それでいて午後7時半にはまっくらというのは東アジア特有の現象、時間間隔だろう。
この日本辺境論、ガラパゴス現象の一つの問題だ。

前にサマータイムについて論じた時の問題点の殆どを解消する方策である。それでいてサマータイム批判者の論拠もみな崩れてしまう方策として、評価すべきだ。

(以下引用)
日本の標準時のもととなる子午線を、兵庫県明石市を通る現在の東経135度から東に15度移し、標準時ごと1時間繰り上げてしまおうという壮大な計画を、元行政マンが発案。今年夏にも国に提案する方向で、5日午後に初会合を開く学識者らの民間組織「早起きニッポン研究会」で協議を始める。日本人の生活リズムを変え、省エネや経済発展につなげるのが目的で、効果額は約2兆円に上ると試算。海外には子午線を移した例もあるといい、発起人は「ぜひ実現したい」と話している。
発案したのは、平成9(1997)年に京都市で開かれた国連の第3回気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)にもかかわった元市職員、清水宏一さん(64)。清水さんは、京都議定書を生んだ会議に接する中で、欧州諸国の多くは国の東側に子午線がひかれ、朝を早く迎えてエコや経済活動への効果を生み出していることに気づいた。
子午線変更の実現可能性を模索する中で、多岐にわたる専門知識がいると判断。大学教授などさまざまな専門家で構成される「関西活性化研究会」の部会として、早起きニッポン研究会が立ち上がった。
子午線変更で1時間の繰り上げが実現すれば、夜間の消費電力が減るほか、労働効率が上がり余暇も増え、文化活動も活発化するとみられる。財団法人・日本生産性本部(東京)は、国全体で時計を1時間早めるサマータイムを実施すると、年約9700億円(15年度調べ)の経済効果があると試算。清水さんは子午線をずらし、恒常的に時間を繰り上げることで「経済効果はサマータイムの約2倍になる」とみている。
移行手順としては、最初に全国の公的施設や学校、企業、交通機関などの始業時刻を1時間早くすることから着手。定着度合いをみて、子午線を変更する計画を立てている。
明石市立天文科学館によると、海外ではキリバスが観光活性化のため、標準時子午線を変更して「世界で一番早く1日を迎える国」にしたほか、豪州やベネズエラでも経済活性化などのために変更したという。
今回の計画について、研究会に参加する京都大学経営管理大学院の塩沢由典客員教授(経済学)は「時間に余裕ができると、知的文化活動が活発になる。家庭人も増え、教育環境も向上するのでは」と評価。研究会には、京都市の地球環境政策監や高齢者のデジタル化支援団体「老テク研究会」(東京)のメンバーの参加も予定されている。
子午線変更には、最終的に国会決議が必要となり、明石市との協議なども欠かせないとみられる。清水さんは「子午線の変更は国内初の試みで予想がつかないことも多い。今後、研究会で意見を聞きながら模索していきたい」としている。

■子午線 地球の南北に伸びる同じ経度の地点を結んだ線で、経線とも呼ばれる。英国の旧グリニッジ天文台を通る「グリニッジ子午線(本初子午線)」が経度0度と規定される。日本の標準時子午線は明治19年、政府により、グリニッジ子午線から時差9時間となる東経135度に設定され、兵庫県明石市を通っている。

http://sankei.jp.msn.com/life/trend/100205/trd1002051253003-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/100205/trd1002051253003-n2.htm

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内外価格差二つ ハロッズ商品 [海外事情]

三越のハロッズショップ
http://www.mitsukoshi.co.jp/spcl/harrods/

調べてみると、ポンド安の時代にちっとも円高還元しておらず、ぼったくりであることに気づいた。3年ほど前、1ポンド250円近くになったばかりの時は、ほとんど内外価格差がなく良心的だったのだが、その後に収支改善のために値上げしてしまった。昨年の金融危機で、ポンドが対円で半分以下(最低で117円。今は140円強)に下落しても、円高還元しないのである。
まあ値上げしても売り上げが減るようなものでもないし、値下げしても倍売れることもないということだろう。
欧州大陸のブランド品や輸入車のほとんどは円高還元の値下げをやったのに、なぜかもっと円高の恩恵のあるイギリス商品はあまり値下げされない。

わかりやすい例を挙げると
・125グラム入りの缶の紅茶6.99ポンドが1890円
・イヤーベア20~25ポンド(年によって違う)が6850円
(1ポンド140円で計算してみよう)

関税がなく、イギリスの高い付加価値税(時限で値下げ中だけど高い)が日本ではかからないから、かつてのような低価格は実現できるはずなのだが。 前者の日本価格の推移は不明だが、後者の熊のぬいぐるみは1ポンド250円時代に5000円だった。ポンド高対策で現行価格に値上げしたものを、ポンド相場暴落後も値下げしていないのである。
しかもイギリスの実情は、旅行に行ってみたら全く違っていた。
今年末のイギリスは付加価値税値上げ前の駆け込み需要と業界の一大バーゲンで国中が祭り状態である。クリスマス後のバーゲンでハロッズの本店は年末のアメ横か初詣並みの大混雑であったし、ハロッズベアは2個20ポンドのたたき売りをやっていた。
紅茶もヒースロー空港の免税店では時限で5.6ポンドかに値下げされていた。

三越の海外品商法は西武百貨店のイケア騒動とは違って、良心的だったはずだが、伊勢丹との統合で利益主義に転じたのだろうか?
(西武はIKEAを独占して輸入していた時期があり、勝手に組み立てて、「北欧の上質な家具」として割高な価格で売っていた。)

消費者の自己防衛の手段としてはイギリスに旅行に行った際に大量に買い込んで、自分用と土産用にばらまくしか手がなさそうである。
(オークションで転売が成立するほど単価が高くないところが、強気の商法を許しているのか?)

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ミシュラン赤ガイドの意義 [海外事情]

(2007年12月に書いた記事です)
ようやく昨日、売り切れ続出だったミシュラン東京の第二刷を購入できた。意外と近所の小さな本屋にたくさん入荷していた。

すでに掲載店舗の話はさんざん出ているので、本としての体裁の話を中心に。
(ただ、超高級店の情報は少ないので、なだ万山茶花荘や福田家、あら皮といった店の正確な値段が出ているのは、別世界のことながら、参考になる。)
http://www.newotani.co.jp/tokyo/restaurant/nadaman_sazanka/index.html
http://rp.gnavi.co.jp/ns/5318426/
何もネットには、場所と建築以外の情報がない。
http://r.tabelog.com/tokyo/rstdtlrvw/13002897/
ぼったくりバー並の恐ろしい値段は踊る。
(こう考えると、トゥールダルジャン辺りって意外とリーズナブルだと納得。あるいは一泊5万円クラスの旅館とか)
ご存じのようにフランス語(実は英語版も相当の部数が出ているが)版は無愛想な実用一辺倒の辞書みたいな本で、二色印刷でひたすら小さな活字で何千店舗もの(星なしも含めて)膨大な情報を集約した本である。余計なコメントとか写真とかは一切なし。
それが今回の東京版は、写真とコメント満載であり、新たなスタイルである。悪くいえば従来からの普通のグルメガイドのようで、新味がない。日本のスイーツ(笑)層あたりに媚びている感がある。

一般に欧米のサービス製品をそのまま日本に導入して、一部のマニアは別として、一般社会(大衆社会ではないが)のレベルで成功した例は希である。何らかの形で日本社会に適合するように、業態や商品を変更している。
スターバックスにしても、中心地の一等地の広大な店舗という業態は、スタンド的なアメリカの都市内の店舗群や郊外店舗(店舗数は桁違いだが)とは異質であり、最初の海外進出であった日本での成功経験を欧州アジアに持ち込んだ。
ダンヒルは日本では女性の男性へのプレゼント用の小物の店であって、高価なスーツやコートは意外と売れていない(プレゼントにするには不倫関係では高すぎるし、熟年夫婦だと妻は自分のものを買ってしまう)。
「昼下がりの情事」からは戦後の欧米の大富豪の生活が揶揄的に描かれている。アメリカの大富豪で独身プレイボーイのフラナガン氏がアメリカから欧州へ大量の荷物を詰めて持ってきて、パリのホテルリッツの廊下に積んでいたルイヴィトンのハードの旅行鞄(というより堅固な函)は、店舗のディスプレイでは見るが、日本で実際に使っている人を見たことがない。
フラナガン氏は最後の場面でリッツをチェックアウトする時、大量のドル紙幣のチップを行列した従業員にばらまくのだが、荷物を運ぶのにタクシーを4台くらい使うのである。
日本人では想像しがたい大荷物の移動は、カエサルやタキトゥスが描いた狩猟民族の習性、中世の移動宮廷、王侯の旅行の伝統をふまえていると言えよう。(江戸時代の大名行列が日本史上では異常である)

トカラ列島の日食騒動とクルーズ船 [海外事情]

あれだけ高価な30万円以上ものツアー料金を取ってまで、各島は受け入れ体制を整備したわけだ。
が、受け入れられたのは悪石島で1000人程度に過ぎない。雨で観測できなかったのだから、誰も得をしなかった。島に積極的な経済効果があったわけではない。
トカラ列島が日食の中心で、今世紀最高の日食を観測できるのは事実だろう。だが、ホテルなどの収容力が圧倒的な中国の上海や杭州でも、日食は観測できた。(中国も雲で見えなかったが)

結局、一番得をしたのは小笠原近海で、チャーター船の「ふじ丸」から観測した人たちだったよう。トップツアーのチャーターらしい。船ならば晴れた所を求めて移動できるから、こういう時に好都合である。
問題はこういう時、日本には使えるクルーズ船がチャーター専門の「ふじ丸」しかないことである。定員は600人、実際には各室2人で300人程度しか乗れない。
いまどきの巨大な世界のクルーズ船では、子どものような存在である。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%BA%E5%AE%A2%E8%88%B9
アメリカのカリブ海で巨大化が進んで、ロイヤルカリビアンクルーズが16万トンのフリーダム級に次いで、22万トン級のオアシス級が竣工しそうである。オアシス級の収容人数は5000人を超え、部屋の数は2000室を超える。ギネス級の巨大ホテルそのものである。巨大化は欧州でも進んでおり、MSCクルーズやコスタクルーズなどは10万トン以上の巨大船をここ数年であっというまに主要ルートに就航された。
郵船クルーズの「飛鳥Ⅱ」は5万トン級とそれなりの規模である。が、日本海の2万トン級フェリー(国内船舶のトン数は国際船の半分程度に換算される)と変わらないサイズだし、クリスタルハーモニーの改装による、厚化粧にすぎない。世界のクルーズ船業界では1990年ころの船など、バルコニー付き客室も少ない老朽船である。
(老朽船すきもピースボートまで行くと感心する。世界中から客船マニア垂涎のボロ船をチャーターする能力はすごい。)

本来は日本近海に10万トン級のクルーズ船が常時10隻くらい配船されていて、毎週小笠原クルーズや奄美クルーズなどに出発しているのが当然である。それができないのは、日本のクルーズ市場がバブル期に比べて縮小しきっていて、新しい船を導入できない現状だからだ。昔はホーランドアメリカやキューナードのクルーズ船も普通の日本人が乗っていたのである。
こういう日食観測にこそ、世界の巨大クルーズ船を借りればよかった。そうすれば島の受け入れの心配も要らないし、雲で見損ねる心配もなかった。そうはいかないのが日本経済の深刻な地位低下が窺われる。だいたいバブルの時期には横浜の博覧会の間、クイーンエリザベス二世号を横浜港につなっぎぱなしにしたりしていたのである。そんな贅沢はいまでは不可能である。当時の日本の政財界が世界に対して持っていた影響力を物語っていたのは、オリエント急行の日本到来だけではなかった。

奄美諸島やトカラ列島、小笠原こそクルーズ船の定常ルートに適している。カリブ海の島くらいは見るものはあるし、小笠原などは北硫黄島、孀婦岩、須美寿島などの異様な島形などは、かなりの観光資源なのに、普通は見る機会がない。
カリブ海やエーゲ海などの寄港地に行けばわかるが、クルーズ船の経済効果は離島では恐ろしいほどである。金持ちが3000人ほど毎日のように人口わずかな島に降り立つのである。ギリシャの島々などはこのおかげで、日本をはるかに上回る金持ち島になった(そもそもギリシャの一人あたりGDPが2007年には日本を超えたことは知られていない)。
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これこそエコ助成金だ イタリアの自転車補助金 [海外事情]

さすが欧州だ。自転車というものに想定されている価格が日本と段違いだ。けっきょく内需拡大というけど、10000円自転車じゃない、まともな自転車がマニアにしか売れないのが日本の問題かも。けっきょくスポーツ自転車のブームって東京近郊だけだ。

ちなみに欧米に、日本のママチャリこと婦人軽快車がないというのは嘘で、あれの模範はフランスのプジョーの普通の自転車あたりである。別に日本の独自ではない。しかしママチャリばかりになっているというのは日本の独自性であろう。発明はしないが、改良量産は得意という、日本の特徴が出ている。
そして欧州では、クロスバイクやMTB(アメリカじゃこればっかり)、ロードレーサーの比率がずっと日本より高いのは事実である。
アメリカでは自転車は社会的な位置づけとして、極めて特殊な存在である。子どもの近所の乗り物として以外(これはETとか映画にもよく出てくる)は乗馬並の趣味の領域であり、欧州とは全く事情が異なる。
奇妙なことに東南アジアでも自転車は富裕層や外国人の趣味的な存在である。バイクが一番身近な交通機関としての社会的な位置を確立してしまい、自転車は遅れた過去の乗り物ということになっているからだ。

イタリアでは自転車購入にあたり、国から奨励金が出る制度が4月末から開始された。 これは環境および交通渋滞緩和政策の一環として施行されたもの。特色は、電動アシスト自転車だけでなく、アシストを持たない、いわゆる“普通の”自転車も対象に含まれていることだ。購入者は環境省の指定車両リストの販売価格から30%引きで自転車を購入できる。販売店はその分の金額を国から受け取る仕組みだ。 イタリア環境省は、奨励金のために2009年分として875万ユーロ(約11億5000万円)の予算を確保している。他のイタリアの奨励金同様、制度は予算がなくなり次第終了すると思われる。 購入は1人あたり3台まで。手に入れるには、イタリアの住民に登録が義務づけられている納税者コード、もしくは商業活動をしている個人/法人が保有する付加価値税番号の提示が必要だ。適用限度額は700ユーロ(9万2000円)と高く設定されている。つまり数千ユーロ級の高額なロードレーサーやマウンテンバイクを購入しても奨励金は700ユーロまでだが、一般の自転車を購入するには十二分であろう。 また今回の制度は、同様にイタリアで実施されている自動車の買い替え奨励金制度と違って、“下取り車”は要求されない。そうしたことを背景に、イタリア国内では制度開始1週間弱で、すでに1万2000台の自転車が制度の対象として販売された。過去5年に10%増の伸びを示してきたサイクリングをベースにした観光市場にも、さらに弾みがつくことが期待されている。 ちなみにイタリアは年間252万台を生産する欧州一の自転車生産国である。今回の奨励金対象リストにも、ビアンキ、ピナレロなどイタリアを代表する高級自転車ブランドの名前が並ぶ。 ただし、国内市場のシェアの41%は外国製自転車だ(いずれもデータは07年)。1997年にイタリアで4輪車の買い替え奨励金制度が開始されたとき、フィアットの思惑とは裏腹に国民は外国車に乗り換えてしまい、結果として当時のフィアットは危機に陥った。販売店はともかく、国内の自転車製造産業にどれだけプラスになるかは、最終の結果を待つしかなかろう。 http://response.jp/issue/2009/0507/article124202_1.html

スターバックスは飲み方を選ぶ [海外事情]

スターバックスのコーヒーがまずいと言う人は、以下の点を確認しよう。そりゃ、コーヒーの専門店や玄人はだしの趣味人の入れたコーヒーには負けるが、どこでも平均的にそこそこの水準にあることは重要なことだ。
まあ、日本全国のスターバックスの全店舗を制覇したSWA氏ではないが、この手のコメントをするには100店舗は自分の足で回らないと駄目だ。

1,その日の日替わりコーヒーの豆の種類は何か?
→ハウスブレンドはくず豆を使っていてまずい。タリーズとの比較をする通人は、普通はハウスブレンドを指して言う。イタリアンローストとかの類は当たり外れが多い。一昨年のクリスマスブレンドは当りだったが、去年は駄目だった。

2,周囲のスイーツは本当にコーヒーを飲んでいるか?
3,あなかは、どこのスターバックスの店舗に行ったか?
→コーヒーは生ものなので、淹れて直ぐに飲まないと、味が落ちる。スイーツだらけの繁華街の店、郊外店だと、誰もホットコーヒーを頼まないで、甘いラテ系ばかりが売れるので、10杯くらい貯めておくコーヒーは入れ替われず、味が落ちていく。朝から淹れたコーヒーをポットで暖め続けておく昔の駄目な喫茶店の不味いコーヒーと同じである。
→ただし、あまりにスイーツだらけの郊外店だと純粋なコーヒーの注文が少なすぎるので、コーヒーを作り置きしない。甘いものを頼まない変な客が来たということで、あわてて一から淹れてくれる。それが一番正解かも。

4,マグカップを使うよう、店員に指示しているか?
5,店内なのに、格好をつけて紙コップの蓋のプラスチックの穴を通して飲んでいないか?
紙パックに入った牛乳が不味いのと同じ理由で、紙コップやプラスチックの味がコーヒーに移る。

まあ、アメリカ発祥のファーストフード店、チェーン店の飲食物が日本に来ると(量は格段に減って)美味しくなるのは普通だから、驚かない。デニーズなんて日本とアメリカの店の味の落差が大きすぎる。
そもそもスターバックス自体が、薄いアメリカンコーヒーのアンチテーゼだから、逆に世界的に豆を煎りすぎなきらいはある。まあ結局、味は店長店員次第なのだが。


米スタバ、従業員教育で全米店舗を一時閉店   米スターバックスは26日、おいしいエスプレッソのいれ方を店員に再教育するため、全米7100店舗を一時閉店した。 米大手外食チェーンが営業時間内に一斉に店を閉めるのは異例。米国では顧客の「スタバ離れ」が起きており、一斉閉店は同社が努力していることを顧客にアピールする狙いもありそうだ。 閉店は午後5時半から同9時までの3時間半。13万5000人の店員が現場で再教育を受けた。社員教育は通常、来客の少ない時間などに実施するが、同社は再教育の様子の写真などを公開、積極的にPRしている。 スターバックスは昨年10―12月期の米国内既存店売上高がマイナスに転じるなど、国内での不振が目立つ。 景気悪化の影響もあるが、主力のコーヒーについて有力消費者情報誌で「マクドナルドの方が味が上」との批評も出ていた。 一時閉店のため、店舗入口のドアに鍵をかける従業員=26日、ボストン〔AP Photo〕
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20080227AT2M2701Q270220081F.jpg

(ロサンゼルス=猪瀬聖)(11:02)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20080227AT2M2701Q27022008.html

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スターバックスの店舗網と日米の差異 [海外事情]

(前に買いた記事を改訂)
日本では勘違いされている面が多いが、アメリカのスターバックスの店舗数は日本など海外店舗に比べて、桁外れに多い。何しろ全米で10000店舗を超えているわけだ。シカゴオヘア空港あたりじゃ、搭乗口(100以上あるわけだが)いくつかごとに売店があるほどだし、郊外のSCでもちょっとした規模の所には必ずある。だから元々、おしゃれ感なんてとっくに消滅している。
確かにアメリカの国土が広いのは事実だが、別に中西部の大平原や砂漠の真ん中に店舗を構えているわけではない。広い国土でも人の集まるところは限られているし、人口は3億人もいるわけではない。
日米の人口比を考えれば、日本にもスターバックスは4000店舗、つまりマクドナルド以上の店舗数が要請されるが、そこまでの店舗数は日本にない。そのくせ意外と日本のスターバックスは店舗を地道にスクラップしている。けっきょく盛岡なんて駅前とイオンの巨大ショッピングセンター内にしか店舗が残らなかった。

日本とアメリカの消費文化は似ているようでいて、大量消費の部分がけっこう食い違っていることが多い。それは日本文化の固有性だけでは説明できない部分が多い。
アメリカではホンダのアコードとシビックが先月1ヶ月だけでおのおの4万台近く販売された(5月なんてシビックだけで53000台も売れた)ので、人口比を考えれば日本では1万五千台か1万台は月に売れなくてはおかしいが、実際にはその十分の一も売れていない。
まあドイツでVWゴルフはともかくベンツEクラスが月に1万台近くも売れているのは、タクシー需要とはいえ日本から見ると驚異的な台数ではある。
(まあ日本では軽自動車という巨大な市場があることを忘れがちだ)

http://jp.ibtimes.com/article/biznews/080702/21079.html
米コーヒーチェーン大手スターバックス(Starbucks)は1日、2009年内に米国内の600店舗を閉鎖すると発表した。米経済の減速と、急速な拡大戦略による収益の悪化に対処するもの。 同社は、閉鎖対象となる具体的な店舗は明らかにせず、全国の店舗が対象になっているとだけ説明した。閉鎖される店舗の70%は、2006年度以降にオープンした店舗だという。 同社広報によると、店舗の閉鎖によって、同社の全従業員の7%にあたる約1万2千人が影響を受ける。大半の従業員は近隣の店舗に移籍するが、人員削減の規模については正確に把握していないという。同社は退職費用として800万ドルを試算している。同社は、店舗閉鎖の関連費用が最大3億4,800万ドルになると予想しており、そのうちの2億ドルは4-6月期(第3四半期)に計上する。同社は6月末に4-6月期決算を発表する。 Pete Bocian最高財務責任者(CFO)は電話会見で、閉鎖対象の店舗がしばらくの間、社内の監視リストに入っていたと説明した。これらの店舗は収益性が低く、今後も改善が見込めないもので、大半は既存の店舗に近接した場所に開店されていたという。 複数のアナリストは、スターバックスの米国における爆発的な拡大が、市場の飽和という形で最終的に同社に打撃を与える可能性を指摘していた。

北朝鮮が人工衛星を撃っても、それがどうした? [海外事情]

どうやら明日、北朝鮮のテポドンが発射されそうな気配である。
日本政府や世間では大騒ぎをしているが、拉致問題と一緒で、アメリカ韓国からもまともに相手にされていない。従来の安保理決議に違反するだろうという点で了解が取れつつあるだけである。もし発射されると、安保理の緊急理事会が開かれるようだが、中国やロシアに遠慮して名指しで非難する決議も困難な情勢である。
(煩瑣なのでソースは引用しない)
アメリカ政府もアラスカにでもミサイルが落ちない限り、直接的な反応はしないようだ。

そもそも北朝鮮が主張するように、人工衛星であることは事実だろう。しょせん打ち上げる機構はミサイルと同じである。昨日のNHK総合のニュース解説でもその点は強調していた。だが、「だから危険だ、危険だ」と強調するのはやり過ぎではないか?小型の核弾頭の開発に成功したという見方もある。だが、今回のロケットに積まれているわけでもない。
北朝鮮だから恐ろしいといって、むやみに国民の恐怖心を煽るのが賢明なやり方であるとは思わない。そもそも(あれだけ窮乏した国が国力を傾斜注入するのが合理的かどうかは措いて)北朝鮮だから人工衛星を打ち上げてはいけないという国際規則はない。あくまでミサイル技術に転用が可能な打ち上げをやることがプラグマティックに北東アジアの安定に悪影響を与えるだろうという国際政治の実際的な運用の問題として、北朝鮮のやり方を批判することができるだけである。人権問題などとは性格の違う話である。

こういう時に思うのは、
「日本のやることは原子力も含めて平和利用だから、全て正しい。世界の信頼を集めている」
と勝手に思いこんでいるのに通じていると思う。日本のマスコミの報道だけを見ていると、IAEA国際原子力機関は北朝鮮やイランの核開発だけを厳しく監視するための機関のように思える。
実は原子力発電の大国でありながら核兵器を持たない日本の民間の原子力発電所に対して軍事転用や事故の危険がないか、専門家が日本原発地帯に常駐する厳しい体制で監視していることはあまり知られていない。発電で生み出されるプルトニウムは核兵器に容易に転用が可能である。

だいたい日本は過去に、イスラエルや南アフリカの核武装への動きに対して、厳しい批判の声を挙げただろうか?そもそもこの二国が核武装をしようとしたということ自体、普通の日本人は知っているだろうか?
そうでいて北朝鮮から離れている欧米諸国に北朝鮮の核開発への厳しい制裁への協調を求めることができるだろうか?日本にとってイスラエルがどうしようと直接的に関係ないのと同様に(中東の安定が害されて、石油価格が上がって困るという間接的な問題はあるが)、欧州諸国にとっては北朝鮮のことなどはどうでもいい。そうでなければ多くの西欧諸国が北朝鮮と正規の国交を持ったりはしないだろう。

だいたい北朝鮮もそれほど馬鹿ではない。
金正日(もし死んでいて、影武者でもいい)と側近からなる政府中枢は、残酷卑劣ではあっても。馬鹿だったら、これだけの困難な国内外の情勢を乗り越えられず、とっくに国が滅びているだろう。金日成が死んだとき、諸外国の最大の心配はそれであった。金正日はもしかして馬鹿ではないかと。
もしテポドンの先端に核弾頭が積まれていたり、日本の陸上や領海にロケットが落ちれば、どういう困難な事態になるかは北朝鮮は分かっている。まともな空軍もない国だから、一瞬のうちに米軍と日本の自衛隊(韓国は手を出さないという説もあるが)によって制空権を取られ、国土は壊滅するだろう。たとえ何発か核弾頭を持っていても、それまでである。
従来の見方では、「それでも北朝鮮は陸路でソウルまで侵攻して、ソウル市民を人質に取るだろう」
というカードがあった。だが、北朝鮮と韓国の圧倒的な平常軍備の差は今やそんな事を不可能としたようである。
以下の田母神氏の発言は興味深い。これだけの極右の自衛官でも、リアリズムは持っているようだ。

県議会防衛議員連盟(深井明会長)の研修会が二日、県議会議事堂であり、田母神俊雄前航空幕僚長が講演した。 歴史認識に関する政府見解を否定する論文を発表して昨年十月に更迭された田母神氏は「私はいい国にしようと 信念を持ってやってきた。『日本の国はいい国だ』という言論の自由はない」などと持論を展開した。 田母神氏は「日本以外の国は政治経済は独自だが軍事はグローバルスタンダード。日本は逆」と、 現在の防衛行政を批判。さらに「専守防衛では駄目。相手は一発で倒せる状況でしか来ないから、 抑止力にならない。戦後の歴史観を破らないとグローバルスタンダードになれない」と主張した。 また「核兵器は一発でもあれば十分抑止力が働く」と核武装論も展開。 北朝鮮の長距離ミサイル問題には 「北朝鮮は絶対に被害が出ないようにしか撃たない。(ミサイルに)当たる確率は交通事故の百分の一で 当たったら運が悪い。心配してもしょうがない。私は電車に乗る」と述べた。 (萩原誠)

東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/20090403/CK2009040302000109.html

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