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高速道路無料化・値下げで長距離フェリーは本当に危機か? [交通]

民主党の主導する高速道路値下げ、無料化の弊害として反対派に挙げられるのは、だいたい以下の三つである。まあ、だいたい東京中心のマスコミや自民党側が俗耳に分かりやすいように挙げているものは以上である。

第一は渋滞が激化するという議論である。
第二はCO2の排出量が増えて地球温暖化が進むという議論である。
第三は公共交通の衰退が進むという議論であり、最も端的にはカーフェリー業界の猛烈な反対がある。

第一の反対については、
「首都圏近郊など渋滞が予想される区間は無料化しない。(逆に首都高の距離制移行のように値上げする)」
という民主党の主張、マニフェストを読んでいない党派的な反対(GWやお盆正月の繁忙期対策も、他のETC割引の交通量誘導政策も何もないに等しい無計画な麻生政権の高速1000円政策の方がもっと愚策)だし、第二の反対論は、とっくにクルマ社会となった地方の交通の現状(高速道路か公共交通機関かでなく、高く誰も乗らない高速と渋滞する一般道の二択)を知らない東京マスコミ偏向の一環であるか、サービス向上を怠る(というより国鉄民営化間もない20年前のサービス水準から退歩を続けるばかりの)JR各社や航空会社など既存の利権、規制を優先して、地域経済や国民の交通利便性を否定する悪しき日本の縮図に過ぎない。
まあ詳しくは触れないが、反対派はドイツやイタリア、イギリスあたりを(鉄道・ローカルバスとレンタカーの二方面作戦で)個人旅行して見ればいい。アメリカだと大都市近郊以外は国内線飛行機とレンタカーの併用となろうが。

今回は第三の論点を中心に触れようと思う。
だいたい、燃油高や高速値下げで経営危機になり、路線廃止に追い込まれた長距離フェリーの航路は存在するのであろうか?
実例がほとんどなければ、オオカミ少年(本当は苦しくはないのに、苦しいと大騒ぎして援助を求める)と言わざるをえない。
最大手のフェリーマニアサイトのFerry Cruisingなどの主張は業界に過剰に与するものではなかろうか?
普段から車庫などの取材で既存の大手バス会社に便宜を被っているバスマニア雑誌が既存の正規の高速バスの問題に目をつぶり、ツアーバスを罵倒する様子にもにている。

なお、ここでは宇高国道フェリーやタコフェリー、2時間程度の離島航路を短距離フェリーと定義し、関西から四国(高知、松山など)への航路を中距離と定義する。

ここ十年のスパンで見れば、長距離フェリーの航路が半減に近いのは事実だ。
90年代後半の現状を見れば、一番悲惨なのは首都圏発着の航路であろう。東京港からは「クルーズフェリー」を呼称した釧路行きの近海郵船、東京~紀伊勝浦~高知のブルーハイウェイ(名前は変更を重ねる)、川崎~宮崎の日本カーフェリー(同)など1970年代以来の長距離航路があっという間に2004年までに姿を消した。
苫小牧方面の商船三井フェリー(旧ブルーハイウェィ)は大洗発にして、東日本フェリーと統合して発展的解消を遂げたと解釈はしても、首都圏発のフェリーの壊滅は否定しがたい。
残るのは、RORO船におまけに客を乗せているような東京~徳島~北九州のオーシャン東九フェリーくらいだ。船内サービスはなきに等しい。フェリーマニア以外で存在を知っているのは徳島県民くらいしかいないマイナー航路だ。
久里浜~大分のシャトルハイウェーは2004年~2006年の間に原油高騰で短命に終わったが、老朽船を高速で酷使し、船内設備の多くを封印して運航していた実情を見れば、航路廃止の要因は周囲の経営環境というより、零細な経営基盤にあると見たほうが良かろう。
博多~直江津~室蘭や太平洋航路など、多くの長距離フェリーを持っていた東日本フェリーは経営破綻に追い込まれ、津軽海峡の航路しか残らなかった。

だが、これらのほとんどが石油も安く、高速も高かった2000年代前半に壊滅したのであって、ETC割引が拡充(深夜割引が3割から5割に、休日昼間割引、昨年からの1000円高速など)したここ3年、いわんや今年6月からの高速無料化の時期に廃止になった長距離フェリーはない。
廃止の原因は高速値下げとは関係がなさそうである。推測するに、現状とは比較にならない1998年~2004年ころの航空運賃激安時代に、飛行機に負けたと見るべきだろう。
他の原因としては、東日本フェリーのような放漫経営(豪華に過ぎた九越フェリーの初代れいんぼうらぶ・べる早期売却の損失、二代目モノクラスのサービス低下の落差、過剰投資で転売も効かない高速船ナッチャン)か、冷凍食品に紙皿のブルーハイウェーのバイキングレストランや高知シーラインなどの「乗せてやっている」的な劣悪なサービス水準などが考えられる。

影響があるのは、四国航路の短距離の呉松山フェリーや、中距離の関西汽船・ダイヤモンドフェリーの今治・松山寄港廃止、減便くらいである。
これらは馬鹿高い本四架橋の料金がETC割引で適正化されたから淘汰されたというべきであって、3本も橋があるのにフェリーが生き残っている方がおかしかったのだ。高い道路料金がフェリー業界への間接的な補助金となっていたのである。あるいは四国の高速道路整備の遅さに助けられていたとも言えよう。

長距離では阪九フェリーが一日3往復体制から2往復体制に減便した程度であって、大阪南港~新門司の名門大洋フェリーは(傍目には過剰にも思える)1日2往復体制を止めていない。今や日本最大の勢力の新日本海フェリー(系列の阪九フェリーを入れれば圧倒的)は、寄港便の敦賀~新潟の運航日縮小以外に減便の兆候が見えない。太平洋フェリーは豪華な新造船を造るほど意気軒昂だ。宮崎カーフェリーやダイヤモンドフェリー南九州航路も悪影響は見えない。
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