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6月28日からの高速道路一部無料化の深慮遠謀 [自動車]

10日近く前になってから、ようやく細かいことが発表された。
http://www.mlit.go.jp/common/000116387.pdf

経済効果がない田舎高速ばかり無料化されるとの批判に対応して、三つほど具体的に経済効果が列挙されている。第一に酒田や舞鶴、八戸など重要港湾との連絡である。第二に観光振興で、山陰などの例。第三が一般道の渋滞解消効果である。この発表のために港湾局の人などもだいぶ働かされたと思われる。

末端部だけ無料化(ただし今年度だけ)して、料金所の扱いなどがどうなるのか疑問だったが、今年度に限ってはけっきょく全て残されるようだ。有料部との間に本線料金所を新設といった、富山県内の能越自動車道(実は富山県道路公社の管理で、ETCも入っていない)のような措置は行なわれないようだ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%83%BD%E8%B6%8A%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A%E9%81%93
あそこは、高岡ICまで開通した時点では、普通の高速道路のようにICごとに料金所がある方式だったが、無料の高岡北ICより北に新直轄方式で延伸された際に、本線料金所方式に改変されたという珍しい事例である。なお高岡ICより北は富山県道路公社は関係なく、国土交通省の河川国道事務所の直接管理となっている。

無料化なのに、人件費やETCゲートの維持費ばかりがかかる奇妙な方式を採用したことには、三つの理由が想像される。
第一に、国土交通省も主張しているように、利用時間・区間別の正確極まりない利用データを取るためである。正確なデータさえ取れれば、後は無料化政策の正当化のための理論武装の大きな武器となり、野党の攻勢をけちらすことが出来よう。
第二に、地方でETC車載器をさらに普及させるという目的がある。大都市では一世帯あたり一台くらいしか自家用車がないケースが多く、商用車比率も高いため、ETCの普及率は高い。だが、地方では自転車の延長のような利用の軽自動車(一家に一台ではなく、大人一人に一台以上)などが多く、車載器の普及率は3割程度に留まる。
無料になれば、当然に朝夕のラッシュなどの高速道路利用が激増することが予想される。だが、今回無料化される高速道路のほとんどは平日昼間は閑古鳥が鳴いているような区間であり、ETCゲートと一般ゲートが一つずつしか空いていないICばかりである。いくら無料の券を授受するだけとはいえ、一つだけの一般ゲートがラッシュのピーク時などに混雑することは容易に想像できる。その隣をETCの付いた車が次々と通過していく。毎日のことだから、朝の時間価値は大きい。ETCの買い控えがまたひっくり返るだろう。首都高速の距離制と同じで、非ETC車の最大料金徴収などと同じようなトラップである。
第三に、料金所の係員の雇用問題である。あと10日ほどでは配置転換も難しい。いきなり臨時の爺さん小母さんを解雇できないが、料金所を閉鎖しては仕事もない。
第四に、全国で既存の料金所を廃止して、本線料金所を新設などと言ったことは実務的に間に合わないということである。
第五に、さらに無料区間が拡大することは既定路線なので、中途半端に現状の有料無料の境界地点に本線料金所を新設しても、二重投資になる可能性もあるからである。

これは今年度に限った措置であり、データさえ取れた来年度以降は分からない。といって数年以内に自民党政権に戻る情勢でもない。
いつまでも無料区間で人件費やETC装置の維持費を負担し続けるのは不合理なので、いずれは既存の料金所は撤去されるだろう。
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