SSブログ

東北地方への帰省輸送 [鉄道]

常磐線

東北本線に比べて圧倒的に客車列車が多い。それも東北本線に比べて鈍足ではない。勾配の少ない線形によって、蒸気時代から優等列車をこちらに回してきた伝統が生き残っているようである。「十和田」の本数が異常であるが、遅い時間に発車する列車は青森での到着が遅くなりすぎるため、以後は特急「ゆうづる」に格上げされてゆく。

8211 634 一関1424 みちのく51号 9月10~15日運転
201D  744 弘前2029 みちのく 花輪線経由 宮古1900(グリーン車 )、鳴子1449編成あり
8213  847 青森2128 十和田51号 全席指定、8月1~25日運転
8201  1040 仙台1704 そうま51号 7月25・26・8月1・2・9~16日運転
201   1210 青森2345 十和田1号 グリーン車・食堂車つき
8203  1446 青森400 十和田52号 2号の続行臨 7月25~8月3・5~14日運転
6201  1620 青森430 十和田2号 7月25~8月23日運転
6203 1950 青森815 十和田3号 9月5日まで寝台列車 、9月12~15日は座席車
8613 宮古816 みやこ 7月24~8月23日運転、全席指定・B寝台つき
203 2035 青森900 十和田4号 グリーン車・AB寝台・食堂車 つき
8205 2130 青森1128 十和田53号 7月25日~8月15日運転
227   2225 仙台845 長距離普通
205   2240 青森1110 十和田5号 AB寝台・食堂車 連結 
6205 2305 青森1140 十和田6号 9月6日まで運転。寝台列車、7月27~8月23日は座席有
207   2330 青森1230 十和田7号 B寝台・グリーン車・食堂車連結
8207  2340 盛岡930 みちのく52号 8月8日~17日運転

228   青森1034 455 長距離普通。227と組だが、こちらは青森発
6204  青森1530 500 十和田2号 指定席あり、7月26~8月23日運転
8208 気仙沼1814 506 南陸中 指定席あり、8月16~20日運転
    一関2051    みちのく53号 8月10~20日運転
204 青森1643 530 十和田3号 B寝台・グリーン車・食堂車つき
6206  青森1900 625 十和田4号 9月6日まで寝台列車、9月13~16日は座席車
8616  宮古1843    みやこ B寝台車・全車指定席
206   青森1930 653 十和田5号 AB寝台・グリーン車・食堂車(ビュッフェ)つき。
208   青森2135 952 十和田6号 AB寝台・グリーン車・食堂車 つき
8204  青森2330 1145 十和田52号 7月25~8月23日運転、8月6日はB寝台つき
6202  青森020  1210 十和田7号 寝台列車・9月7日まで運転
214M  仙台826  1415 そうま1号  10連中7連(サロ・サハシ入り)を平で増結
8202  青森430  1640 十和田51号 7月30~8月8日・10~24日運転、指定席あり
202   青森520  1653 十和田1号 食堂車・グリーン車つき
8212  盛岡1002 1934 みちのく51号 7月31~8月30日運転、指定席あり、11~13日暮里
202D  弘前840  2102 みちのく 花輪線経由、宮古940、鳴子1340発併結、8月11~13日は
8214  盛岡1315 2209 みちのく52号 8月9日~23日運転、指定席あり   日暮里止まり
212D   仙台1650 2300 そうま2号 8月11~13日は日暮里止まり


   上越線経由

新潟止まりの「佐渡」などを除き、羽越本線に乗り入れるものを対象にする。

6801D 1050 秋田2020 鳥海1号 新潟までは毎日運転の季節列車 、グリーン車有り
801   2100 秋田830 鳥海2号 AB寝台・グリーン車つき
8803  2155 酒田715 鳥海51号 8月11日~21日運転
6801  2235 秋田1057 鳥海3号 8月31日まで・10月1~31日運転、グリーン車つき
701   2248 新潟 527 天の川 A寝台つき寝台列車

6802D 秋田710  1722 鳥海1号 新潟から毎日運転の季節列車
8804  酒田1820 421 鳥海51号 8月10~20日運転
702   新潟2305 539 天の川 寝台列車
6802  秋田1805 600 鳥海2号 グリーン車連結、新津着2344で上越線内夜行
802   秋田1905 643 鳥海3号 AB寝台・グリーン車連結


これを見ると、電車急行にも「いわて」「まつしま」などの柱があり、「ばんだい」などには季節性が付加されている。続行臨とも見るべき客車臨時急行があるが、交直流電車が高価 で、定期列車の分を確保するのが精一杯で、ローカル列車などとも共有できる客車と、貨物と共用 の交流電機の組み合わせで波動輸送力を確保している状況が伺える。
また東北特急はどれも切符が入手難であった。且つ全席指定列車 も多く、波動輸送の助けとはならない。1980年代半ばまで485系は151系「こだま」の伝統に従って12・13連の固定編成をとり、波動客への対応は無視されていた。ただ全席指定特急は、それはそれで、指定券を確保した客に一定の快適性を確保していた。輸送力不足の路線の自由席 ほど不快なものはない。その意味で座席の足りないL特急は、鉄道に有力な競争手段がなかった時の産物かもしれない。
臨時急行には下り夜行・上り昼行が多い。これは休暇も短かったため、行きを夜行にして時間を節約し、帰りは疲れで勤務に影響を及ぼさぬよう、夜までに東京に帰り着こうとするためである。


   参考:当時の航空路線(当時の急行自由席、B・A寝台下段運賃+料金)

・当時の航空機が、運賃・輸送力の点で鉄道の有力な競争相手ではなかったことが分かる。運賃の低廉化と波動輸送に対応するためには、各空港のジェット化 を待たねばならなかった。

全日本空輸 羽田―仙台  6往復 YS11・フレンドシップ(F27)5200円(1770・2970・5970円)
      羽田―山形 2往復 F27 5400円(1860・3060・6060円)
      羽田―秋田 3往復 YS11・F27 7500円(2530・3730・6730円)
日本国内航空  羽田―花巻 2往復 7500円(盛岡2450・3650・6650円)      
        羽田―青森 2往復  10200円(2860・4060・7060円) 
        羽田―八戸  1往復 9800円(2690・3890・6890円)


・文中でも未解明の事項は多かった。既存の運輸史の記述が定期列車に偏っているからである。が、この頃は毎日運転の臨時列車や、2ヶ月運転を続ける季節列車などがあり、今日ほどその境界は明瞭ではない。本稿の内容についてより深くご存知の方があれば、ご教示いただけると幸いである。

・文中敬称略
・主な参考文献は文中に挙げた。他には
寺本光照『国鉄・JR列車名大事典』中央書院・2001
「鉄道ピクトリアル」連載『国鉄急行列車変遷史』(総目次がないのがつらい)
昭和45年10月1日現在『東北本線列車ダイヤ』仙台鉄道管理局・盛岡鉄道管理局
昭和53年10月               東京北鉄道管理局
(東京大学鉄道研究会で保有)
「簡易線」98年駒場際号特集『20年前の時刻表』の関連各稿
ARC 資料館http//www. urawa. cool. ne. jp/ beppu:過去の編成表のデータベース

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:旅行

東北地方への帰省輸送 [鉄道]

2.最盛期の1970年8月

・ここでは敢えて夏を考察の対象とすることにした。冬は特に「ざおう」がスキー輸送と渾然一体となるからである。が、全国での知名度の問題があり、この段階でどれだけの列車が東北地方の夏祭りを視野に入れているか、判然とはしない。なお、電車特急、寝台特急については本題を外れる上、資料・文献も多いのでここでは省略する。

東北本線・磐越西線・奥羽本線

 ヨンサントウで東北本線は特急の最高120キロ化 が行われているが、1970年代後半のように特急街道という印象は少なく、電車急行 もあまり特急退避を受けない 。主な急行をリストアップすると以下のようである。

8101上野545 仙台1155 まつしま51号 1番手で客車ながら表定67キロ。10~20日運転
101M  640 盛岡1350 いわて1号 サハシ入り7連。表定75キロの俊足。8101を郡山で
       喜多方1111 ばんだい1号 グリーン車入り附属6連。        抜く。
6401D  655 秋田1720 おが1号 9月30日まで単独運転
101D  704 青森1825 八甲田1号  盛1620 久慈1830の附属編成を併結
       秋田1720 おが1号 本来は八甲田と併結して15連で運転
8123 710 会津若松1302 ばんだい51号 ひばり・つばさを待避。貨物列車 でスジが寝る。
8125  808  福島1244 あづま51号 急行とは思いがたい鈍足で秋田行き普通427に変身
1103D  913 新潟1618 いいで 磐越西線経由
       山形1529 ざおう1号 9月1日まで、10月1日~11月20日運転
8401  929 山形1617 出羽51号 普通449となって新庄に直通。8月1日~24日
     会津若松1327 ばんだい52号 8月1日~24日運転。小山までに1101Mを待避。
1101M 945 仙台1432 まつしま1号 普段は附属6連を福島で切り離すが、それを会津へ。
     会津若松1404 ばんだい2号 8月31日まで、9月12~15日運転
8127 1029 仙台1620 まつしま52号 8月1日~25日運転
103M  1115 盛岡1833 いわて2号 郡山で8127を抜く。 
     会津若松1523 ばんだい3号 
8103 1128 盛岡2005 いわて51号 
6113M 1225 仙台1716 まつしま2号 郡山まで毎日運転の臨時列車
1401M 1333 山形1845 ざおう2号 
6105M 1430 盛岡2200 いわて3号 
8413 1439 米沢2107 ざおう51号 宇都宮でひばり4号を待避。8月10日~14日運転
6107 1515 仙台2005 まつしま3号 毎日運転の臨時列車。黒磯 ではつかり2号を待避
1103 1547 仙台2038 まつしま4号 
       喜多方2020 ばんだい4号
8415  1726 秋田532  おが51号 全席指定。秋田から定期629大館行き
101 1900 青森616 八甲田2号 B寝台付き。仙台から夜行区間で増結。
401 1934 青森946 津軽1号 グリーン車、AB寝台つき。
6401  2006 青森830 八甲田50号 7月25日~8月10日、14日~9月1日運転
        大館900 おが2号 43年改正で設定された季節臨。この夏は座席車
8417 2115 男鹿915 おが52号 7月24日~8月23日運転
6103 2119 青森925 八甲田51号 9月15日まで。盛岡まで全席指定。2~5日は寝台    
103   2208 盛岡659 北星 寝台急行 昭和50年3月改正で20系特急 に。   列車
405 2222 青森1336 津軽2号 グリーン車、AB寝台付き。山形から有効時間帯 。
6105D 2230 小牛田520 まつしま54号  7月25日~24日運転。時間帯がやや中途半端。
       山形526 ざおう52号 7月25日~8月31日運転。8月11日~13日品川発
421   2239 青森2156 奥羽本線経由の長距離鈍行。福島発614で上野―福島夜行。
8105  2251 盛岡812 いわて53号 8月1日~14日運転。予定臨。
8403 2304 秋田1104 おが71号 8月12日まで、30日~9月13日運転。全席指定
403D  2308 酒田814 出羽 奥羽・陸羽西線経由 グリーン車付き。
107M  2317 盛岡825 いわて4号 北星に対応する輸送力列車で、昼行と共通運用 。
6109M 2328 仙台545 まつしま5号 8月31日まで運転。107Mの続行臨
8111M 2336 仙台550 まつしま55号 7月27日・8月4日~9日・19日運転
      会津若松448 ばんだい53号 7月25・26日・8月1~3・14~18日運転
1101 2340 仙台610 新星 A寝台つき寝台専用列車。完全なビジネス列車
6403M 2350 山形635 ざおう3号 毎日運転の臨時列車。8月11~13日は品川発
      会津若松508 ばんだい5号 
1103  2354 福島529 あづま2号 普通列車で仙台821。グリーン車つき。
      会津若松555 ばんだい6号 グリーン車・B寝台連結
8121  012  福島529 あづま2号 7月25日~8月21日は単独運転
6108 015 青森1330 八甲田52号 8月1~20・22日。10日は名古屋1708「あおもり」
8405  053 横手1400 おが53号 貨物列車に阻まれて福島643、8月11~13日
     会津若松715 ばんだい54号
  
422  青森629   436 奥羽本線経由の長距離普通。福島2214発。白河―上野は快速運転
8118 仙台2045  418 まつしま55号 全席指定8月10~20日運転。15~20日は石越・女川発 
8414 横手1644  406 おが51号 8月10~20日運転
1104 福島2330  444 あづま2号 仙台2052発の普通列車 グリーン車つき
2204 会津若松2303   ばんだい6号 B寝台、グリーン車つき
8120        520 ばんだい6号 7月23日~8月19日は単独運転 
6110 青森1440  454 八甲田50号 指定席あり、7月31日~8月2・5~9・11~20日運転
6108M 仙台2225 502 まつしま5号 ~8月31日・9月12~15日運転、8月16~19日は
404D 酒田1937  514 出羽 グリーン車つき、山形から指定席あり       全席指定
8106 秋田1623  524 おが71号 全席指定 7月30日まで・8月25~9月8日運転
盛岡1945  524 いわて52号 7月31日~23日運転 指定席あり
8716 新庄1930     なるご 陸羽東線経由 8月16~20日運転   
1102 仙台2315  544 新星 寝台列車 2130から仙台駅に停車し、寝台車を使用可能。
106M 盛岡2030  548 いわて4号 
6104 青森1720  604 八甲田51号 7月26~9月15日運転 8月3~6日は寝台列車
104  盛岡2110  614 北星 寝台列車
402  青森1444  623 津軽1号 奥羽本線経由 AB寝台・グリーン車つき
8416 男鹿1820  905 おが53号 7月24日~8月24日運転 指定席付き  下り52号と組
8130 盛岡2130    いわて53号 8月17~19日運転    
6402 大館1855 924 おが3号 8月25日まで
8114 青森1955    八甲田52号 7月26~8月11日・15~28日運転、19~28日は寝台列車
8418 秋田2205 1015 おが54号 8月2日~11日・16~20日運転、指定席あり
406  青森1925 1013 津軽2号 グリーン車・AB寝台つき
102  青森2359 1120 八甲田2号 グリーン車・B寝台・指定席つき
8122 仙台734  1425 まつしま51号 指定席
1104M 仙台836 1344 まつしま1号
102M 盛岡705 1444 いわて1号
1402M 山形955 1455 ざおう1号
8102 仙台1022 1605 まつしま52号 全席指定、8月2~26日運転
8432 山形924 1734 快速 上野―福島に5時間を要す。
8236 猪苗代1210 
6112M 仙台1130 1608 まつしま2号 毎日運転の臨時列車
8112M 仙台1142 1611 まつしま53号 全席指定 続行臨として設定して表定78キロ!
8402M 会津若松1152   ばんだい53号 全席指定 7月26・27日・8月2~4・12~19日
104M  盛岡930 1655 いわて2号
2104M 喜多方1220   ばんだい2号
6106D 小牛田1144 1806 まつしま54号  7月25~8月24日運転、16~20日は女川・石越発
8416D 山形1101     ざおう53号 7月25~31日運転
9124 会津若松1323 1915 ばんだい54号 8月11~14・16~20・9月13~15日運転
1106M 仙台1340 1822 まつしま3号 大宮でひばり4号を待避。
2206M 喜多方1343   ばんだい3号
1104D 新潟1220 1919 いいで 磐越西線経由 グリーン車つき
6404D 山形1322    ざおう2号 9月1日まで、10月1~11月20日運転
8104  青森720 2024 八甲田71号 予定臨 全席指定 8月24日まで運転 
8126 福島1601 2043 あづま51号 8月2日~14日・16~20日運転
6104M 仙台1508 1951 まつしま4号 毎日運転の臨時列車
6202M会津若松1533   ばんだい4号
8404 真室川1211 2127 出羽51号 8月1日~24日・9月13~15日 運転
8204会津若松1604    ばんだい55号 8月1日~24日・9月12~15日運転
6402D 秋田1104 2131 おが1号 9月30日まで単独運転
402D        2138 おが1号
102D  青森1007    八甲田1号 久慈1000 盛1210発を併結
6106M 盛岡1420 2143 いわて3号 毎日運転の臨時列車。8月11~13日は赤羽止まり 
6404M 山形1633 2154 ざおう3号 毎日運転の臨時列車
6204M喜多方1707    ばんだい5号




東北地方への帰省輸送 [鉄道]

(某媒体に2002年に書いた原稿の再録)

0. はじめに(夜行列車の現在について)


 戦後の高度経済成長は、日本の社会の姿を大きく変えた。その最大のものは農業から工業への労働力移動、農村から都市(太平洋ベルト地帯)への若年層の人口移動(1) であった。1960年代、中卒者は「金の卵」として首都圏において生産・サービスの即戦力としてもてはやされた。その就職活動は中学校・都市と地方の公共職業安定所が一体となって代行し、人数がまとまれば集団就職列車が運転された。集団就職列車の実態については浅野明彦の近著 (2)が明らかにしている。が、帰省の手段としての夜行急行の記述については物足りないものがあるので、本稿で若干の事項について付加しておきたい。また、農閑期の出稼ぎ(集団就職者の親の世代)者の帰省も含めて考えるべきであろう。

 現在は、東京から東北地方への鉄道アクセスとしては東北・秋田・山形・上越新幹線と、在来線への乗り継ぎが一般的である。1993年のダイヤ改正での衝撃的な話題であった定期夜行急行全廃(上野―青森間での、東北本線を経由する「八甲田」、奥羽本線経由の「津軽」の廃止)以来、間もなく10年が過ぎようとしている。上の二つは当初、多客期は一ヶ月以上もの期間に臨時列車として運転されていたが、徐々に運転期間を減じてゆき、今では影も形もない。残る夜行列車は客車寝台特急の「はくつる」と「あけぼの」のみである。最多客期とて、「はくつる81・82号」が寝台電車583系で運転されるのみで、これも今年12月の東北新幹線の八戸延伸で廃止されるとの見方が濃厚である。
 だがこの現状は、利用者に多様な選択肢を提供するという観点からは正しいであろうか。新幹線からの乗り継ぎは確かに速い。東京―盛岡では速達「はつかり」でも6時間かかったが、現在は速達「やまびこ」で2時間半弱である。が、新幹線特急料金は5650円 (3)である。
更に問題は夜行列車である。寝台特急では開放B寝台・ソロ料金6300円+特急料金が運賃に付加(4) される。これは決して安いものではない。鉄道の普通運賃に相当する高速バス(5)の運賃には圧倒的に価格面で遜色がある。JR化後の長期低落状況は打破できそうにない。しかし急行の自由席料金は201キロ以上1260円であり、これならば何とか高速バスに対抗が可能である。勿論旧態歴然としたボックスシートではなく、3列の高速バスと同等の設備 (6)としてだが。また、東北本線盛岡以南・羽越本線沿線など、寝台特急化によるスピードアップで夜行列車の有効時間帯から外れた地域 (7)にも救済が出来る。
また、今回の「波動輸送」というテーマに照らしても、鉄道は夜行バスに対しても優位に立っている。高速バスの経費の大半は運転手の人件費であり、1台の定員が決まっている以上、増車による経費逓減は見込みがたい。しかし鉄道の場合は編成増強(8) や増発によって旅客一人あたりの経費逓減が可能である。
 
1. いくつかの予備知識

・戦後、第一次産業から第二次産業への労働力移動、即ち多くは太平洋ベルト地帯への若年層の人口移動が起こり、帰省輸送が本格化した時代、道路や飛行機が未発達で、鉄道がほぼ唯一の帰省手段だった時代、言い換えれば国鉄の長距離輸送が頂点に達した時代の状況は現在からは想像しがたいものがある。いくつかのキーワードから当時に迫ってみよう。

   発駅着席券
「交通公社の時刻表」1970年8月号(9)の「国鉄の営業案内」(いわゆるピンクのページ)410頁には、寝台券・指定券の説明に続いて

9.発駅着席券∕お盆や正月のとくに混雑する時期などに安心して座席が確保できるように発駅着席券(50円)を発売します。∕発駅着席券を発売する列車、期間、発売ヶ所などは、そのつど、駅、営業所、時刻表、車内吊りなどでご案内します

とある。多客期の上野駅、上りの途中駅の各列車を待つ列が尋常でないものとなり、着席整理券として発行するようになったものである。巻頭の「夏の臨時列車増発のお知らせ」では、「42万枚」の発売が記され、「発駅着席券を発行する列車」として東京地区(10)・中部地区・関西地区・中国地区・四国地区・九州地区・新潟地区・東北地区に分けて各列車が掲載されている。問題の東京地区・東北地区で、下りは上野駅発「8月11日から8月14日までの毎日、午前10時までに発車する東北・奥羽・磐越西・常磐・上越・信越線列車及び8月11日から13日までの毎日、午後7時以降に発車する東北・常磐・上越・信越線の夜行列車」・品川駅(11)は「8月11日から13日までの毎日、奥羽・磐越西線の夜行列車」が、上りは青森(12)・盛岡から大館・湯沢・米沢レベルの駅まで割り振られている。発売箇所は7月中が都内の主要駅と交通公社営業所で、8月1日からは上野駅(13)(全て )と品川駅(奥羽・磐越西線)である。
今から考えれば、指定券で一本化するべきであろうが、当時のマルスの能力の限界、あくまで当日に上野駅ホームに列をつくことの代わりの整理券として考えればうなずける。

   出世列車
集団就職などで東京に出た者が故郷に錦を飾るには、帰ってくる列車と車両が問題であった。特に「津軽」は奥羽北線沿線から長い間唯一の上野直通急行であったから、座席車主体ながらA・B寝台・グリーン車を長く連結していた。が、全ての人が成功して故郷に帰れるわけではない(14) 。鈍行で帰らねばならない者もいたろうし、帰ることが出来なかったものもいたはずである。秋田出身の知人なども「残酷な呼称だ。」と強調していた。

   わこうど号(15)
勤労青少年の帰省のための全席指定の臨時列車で、1972年12月号の時刻表によると指定券を特別に1ヶ月前から発売した。当時の指定券発売は7日前からであった。東京・大阪などの他に刈谷・岐阜・四日市など大工場のある都市にも設定されている。「八甲田」「津軽」「蔵王」などの臨時列車が「わこうど蔵王」などに改称された。最寄り駅から乗れるよう、有効時間帯の停車駅はきめ細かくあり、下りは夜行、上りには昼行(中距離)・夜行(長距離)だった。「シュプール」などと同じで、夜行明けで出勤するのは辛いからだろう。

   グリーン車
等級制廃止により、この頃が最も割安。目ぼしい急行には2両(16)も連結され、電車・気動車の冷房化も完了、夜行客車急行にも冷房化されたスロ54やスロ62(17)が多く連結されていた。ボックスシートの急行普通車との居住性の差は歴然とし、利用は大衆化しつつあった。が1950年代の特ロから改良のない設備、1970年代後半の相次ぐ値上げで客は離れていった。

   フルセット急行・輸送力列車・寝台専用列車
本来、1950年代からの歴史を持つ急行は、AB寝台(18)・グリーン車・食堂車・普通車指定席・自由席と、多様な編成を提供するフルセット急行であった。が、国鉄は1960年代以降、客層の分離と運用の効率化のために夜行急行に対して、寝台専用列車(19)と輸送力列車(普通座席車中心)に分割を図った。本稿の範囲では「北星」と「いわて4号」などの関係がこれに当たる。とはいえ、「津軽」や「鳥海」では東北新幹線開業までフルセット急行を維持した。寝台専用列車は多くはブルートレインに格上げされた。

 以下ではかつての東北方面への定期・臨時を含めた夜行急行などの実態について記述する。が、定期の1列車ごとの現在までの変遷を書くのは煩瑣であり、予定臨のスジの変遷などには不明な点も多いことから、私見による最盛期 (20)についてその時の断面を書きたい。



(1)この現象について最も体系的に、社会科学的視点で調査した著作に加瀬和俊『集団就職の時代』青木書店・1997がある。
(2)『昭和を走った列車物語』JTBキャンブックス・2001の第11話「集団就職列車」
(3)勿論、各種の割引きっぷ(たび割セブン・こまち回数券・○×往復きっぷなど)はあるが、利用の柔軟性・多客期の使用などに難があり、また購入する際に客側に知識が必要である。
(4)夙に寺本光照も『夜行列車はどうなっている』(中央書院)で寝台列車という料金カテゴリーの新設を主張している。
(5)青森・弘前・八戸・盛岡・宮古・一関・釜石・水沢・仙台・大館・秋田・角館・横手・鶴岡・羽後本荘・新庄・山形などに運転されている。
(6)「あかつき」レガートシートほどでなくとも、国鉄時代のグリーン車レベルの165系ムーンライト車でもよい。
(7)本文に見るように、1970年段階では福島・会津若松・仙台・山形志向の夜行列車も多かった。
(8)東北の幹線では13連くらいまで対応している。
(9) 『時刻表復刻版 戦後編3』(JTB・2000)に収録された1967年9月号(まだB6版)には記述がない。恐らくこれ以後に作られた制度と見られる。
(10)といっても、既に西行きは新幹線が柱になり、「ひかり」編成は16連化され、規格化されたダイヤで十分な輸送力が確保されているため、東北・新潟方面しか発売されない。
(11)臨時列車の運転などで頭端式の上野駅の線路容量が限界に達するため、奥羽・磐越に支線の定期・臨時急行は品川駅の臨時ホームから発着し、山手貨物線を経由して赤羽に出るようにされた。が不評のため、1972年頃に中止された。
(12)上野行き9列車も設定されており、これは連絡船からの乗り換えが考慮されているのだろうか。それならば、北海道内でなく、青森駅だけで発売しているのは奇妙である。或いは青森県内の人が東京に戻る際に、乗り継ぎ客と対抗せずに座れるようにする措置だろうか。
(13)一部の列車が品川駅発になっていることを知らない旅客のための措置であると推察され、その際に品川発であることを確認してもらうという配慮であろう。
(14)例えば、映画『男はつらいよ 奮闘篇』では、榊原るみの演じる自閉症の少女が鯵ヶ沢から都会に出て、人に騙されたりするのを寅次郎が助ける話である。
(15)以下の記述は浅野明彦の著書に多く拠っている。
(16)急行には、自由席グリーンと指定席グリーンの双方を付けるという事情もあった。
(17)大正期の木造客車の台車・台枠を流用した鋼体化車オハ61にシートピッチ1270mmでリクライニングシートを取り付けたオロ61を低屋根・AU13による冷房化を施したもの。
(18)等級制廃止までは1等A(旧一等・ナロネ20・22など冷房付き個室)・B(マロネ41・オロネ10など冷房付き開放)・C(非冷房)・2等寝台(勿論、非冷房)の区別で寝台料金に格差あり。
(19)寝台専用列車は、少数の指定席車を連結することもあった。
(20)特急中心史観では1975~78年(この改正でスピードダウン)が最盛期であろう。が、この時期には急行は最早、上野―仙台を5時間以内で結んでいないし、特急への旅客の移動が進んだためか、12・14系使用列車が増え、旧型客車による臨時急行も少ない。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(1) 
共通テーマ:旅行

旧聞だが子午線移設を支持する [海外事情]

私はサマータイムよりいいと思う。
東京だと夏に4時ころに明るくなるのはおかしいと思う。それでいて午後7時半にはまっくらというのは東アジア特有の現象、時間間隔だろう。
この日本辺境論、ガラパゴス現象の一つの問題だ。

前にサマータイムについて論じた時の問題点の殆どを解消する方策である。それでいてサマータイム批判者の論拠もみな崩れてしまう方策として、評価すべきだ。

(以下引用)
日本の標準時のもととなる子午線を、兵庫県明石市を通る現在の東経135度から東に15度移し、標準時ごと1時間繰り上げてしまおうという壮大な計画を、元行政マンが発案。今年夏にも国に提案する方向で、5日午後に初会合を開く学識者らの民間組織「早起きニッポン研究会」で協議を始める。日本人の生活リズムを変え、省エネや経済発展につなげるのが目的で、効果額は約2兆円に上ると試算。海外には子午線を移した例もあるといい、発起人は「ぜひ実現したい」と話している。
発案したのは、平成9(1997)年に京都市で開かれた国連の第3回気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)にもかかわった元市職員、清水宏一さん(64)。清水さんは、京都議定書を生んだ会議に接する中で、欧州諸国の多くは国の東側に子午線がひかれ、朝を早く迎えてエコや経済活動への効果を生み出していることに気づいた。
子午線変更の実現可能性を模索する中で、多岐にわたる専門知識がいると判断。大学教授などさまざまな専門家で構成される「関西活性化研究会」の部会として、早起きニッポン研究会が立ち上がった。
子午線変更で1時間の繰り上げが実現すれば、夜間の消費電力が減るほか、労働効率が上がり余暇も増え、文化活動も活発化するとみられる。財団法人・日本生産性本部(東京)は、国全体で時計を1時間早めるサマータイムを実施すると、年約9700億円(15年度調べ)の経済効果があると試算。清水さんは子午線をずらし、恒常的に時間を繰り上げることで「経済効果はサマータイムの約2倍になる」とみている。
移行手順としては、最初に全国の公的施設や学校、企業、交通機関などの始業時刻を1時間早くすることから着手。定着度合いをみて、子午線を変更する計画を立てている。
明石市立天文科学館によると、海外ではキリバスが観光活性化のため、標準時子午線を変更して「世界で一番早く1日を迎える国」にしたほか、豪州やベネズエラでも経済活性化などのために変更したという。
今回の計画について、研究会に参加する京都大学経営管理大学院の塩沢由典客員教授(経済学)は「時間に余裕ができると、知的文化活動が活発になる。家庭人も増え、教育環境も向上するのでは」と評価。研究会には、京都市の地球環境政策監や高齢者のデジタル化支援団体「老テク研究会」(東京)のメンバーの参加も予定されている。
子午線変更には、最終的に国会決議が必要となり、明石市との協議なども欠かせないとみられる。清水さんは「子午線の変更は国内初の試みで予想がつかないことも多い。今後、研究会で意見を聞きながら模索していきたい」としている。

■子午線 地球の南北に伸びる同じ経度の地点を結んだ線で、経線とも呼ばれる。英国の旧グリニッジ天文台を通る「グリニッジ子午線(本初子午線)」が経度0度と規定される。日本の標準時子午線は明治19年、政府により、グリニッジ子午線から時差9時間となる東経135度に設定され、兵庫県明石市を通っている。

http://sankei.jp.msn.com/life/trend/100205/trd1002051253003-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/100205/trd1002051253003-n2.htm

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

小田急電鉄が東名高速と接続特急を運転 [鉄道]

小田急電鉄は4月1日、秦野~東海大学前間の新駅建設と、パークアンドライド形式の特急列車運行の計画概要を発表した。

同社の発表によれば、同社小田急線の秦野駅と東海大学前駅のほぼ中間の、東名高速道路との交差地点付近に1000台規模の駐車場を確保した新駅を2012年度をめどに開業し、新宿駅と小田原・箱根湯本の間を結ぶ特急「ロマンスカー」を停車させる計画だ。当面は特急「さがみ」を新駅に停車させ、「ホームウェイ」を新駅まで延長運転する予定だが、利用状況を見て新宿駅と新駅をダイレクトに結ぶ専用特急も運転される模様だ。所要時間は、新駅から新宿まで1時間以内になるという。
近年、少子高齢化の進展で、首都圏の大手私鉄の沿線の通勤通学需要は減少傾向にあり、沿線外の新たな顧客・需要獲得に向けた経営戦略、ダイヤ改正の動きが進んでいる。東急東横線の特急運転や東武日光線とJR東日本の直通特急の運転が好例だ。
今回の小田急の計画が狙うのは、高速無料化・上限料金制の導入によって増加する首都圏への自家用車需要である。具体的には静岡・中京方面から東京への行楽・買い物客を取り込もうとの計画である。
同社の車多企画室長は計画の意図をこう語る。
「2012年度には第二東名高速が御殿場~三ヶ日の区間で部分開通する予定で、東海道新幹線からの旅客転移が予想されます。高速道路のETC割引によって多くの行楽客が長距離の移動でマイカーの移動が経済的で快適であることに気付いたのです。土日祝日の高速1000円で渋滞のイメージばかりがマスコミの報道で注目されていますが、多くの渋滞は首都圏近郊の一部の区間のみで起こっており、静岡県内まで渋滞するのは夏休み、連休など特殊な時期だけです。6月からは従来のETC割引が廃止され、上限制に一本化される見込みです。そうすれば移動の分散が進み、首都圏近郊以外の高速道路の渋滞はかなり解消されます」
「しかしながら、なぜ地方から東京にマイカーで来るという需要が少ないのでしょうか。それは首都圏近郊の渋滞と、都心の駐車場の問題です。今回の新駅と特急のパークアンドライドはそれらの問題をすべて解消します。」

東海道新幹線に比べて、最高100キロ程度の高速道路では、所要時間の不利はないのだろうか。鉄道と他の交通手段の競争に詳しい鉄道アナリストの川島令三さんはこう語る。
「マイカーのメリットはドアツゥードアの移動が可能な点があり、乗換などの時間的ロス、手間がないという点に集約されます。「のぞみ」で東京駅から名古屋駅までの移動時間は1時間43分ですが、名古屋駅までのアクセス時間が馬鹿になりません。豊田市からは1時間程度がかかります。これに対して豊田市から御殿場までの高速道路の距離は200キロ程度で、渋滞がなければ2時間程度で到着します。小田急の乗車時間は1時間程度で、新宿までのアクセス時間は新幹線とあまり変わりません」
「お父さんが仕事で出張する時と家族の移動は全く違います。乗換は子供つれでは大変ですし、地方都市や中京圏の人たちは電車での移動に慣れていません。」
「家族連れの移動を鉄道に引き戻すには、魅力的な割引運賃と、多様な車内サービスでクルマに勝つ必要があります。国鉄の分割民営化以降、JR東海は初めはサービスの改善に積極的に取り組みました。100系新幹線の2階だてグリーン車や個室、食堂車などにあこがれた人も多いでしょう。」
「ですが、東阪間の出張客の需要ばかりに目が向き、スピードだけの「のぞみ」に運行を特化し、今や残っている付加サービスはオーディオサービスくらいです。それさえグルーン車でもイヤホンの購入か持参が必要ですし、普通車だとFMラジオが必要です。飛行機なら普通席でも飲み物は無料ですし、ヘッドホンも無料で配られます。クルマなら渋滞の中でも車内で自由に音楽やDVDを楽しめます。新幹線とは快適性が比較になりません」 
「小田急のブランド力というのは大したもので、ロマンスカーと言えば私鉄特急の代名詞です。子どもが乗りたがる乗り物として新幹線と並ぶ存在です。マイカー客を取り込む力があります。」

小田急は初期の顧客獲得手段として、神奈川県以外の旅客の駐車場無料サービス、小田急百貨店での一定以上の金額の買い物で往復特急料金・運賃無料などの案が上がっているようだ。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(2) 
共通テーマ:旅行

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。