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縮小均衡のJAL再生計画に疑問 [航空]

JALの再生計画でB747-400が国内線・国際線共に引退することはよく知られている。
だが、旧JASのA300-600Rまで引退することは知られていないと思う。

利用者の立場からすれば、国内線用のB767を全て温存してA300を全て引退させるのは信じがたい。
第一の問題点として機材による輸送力のギャップが拡大する点が挙げられる。
だいたいB767-300とB777-200の間の輸送力の差は相当に大きく、従来はA300で高需要ローカル(年間200万人レベルの旅客のある羽田発着の非幹線)の輸送力を調整してきたのである。前者の定員はクラスJ増席で250人程度にすぎなくなったのに対し、777はファーストクラスも付けて400人近い。
しかも少数残る旧JASのレインボーセブン7J2を除くと、JALの国内線用777はファーストクラス付きの特殊な機材のために幹線(東京・大阪・福岡・新千歳・沖縄那覇のみを結ぶ路線)以外に運用できず(高需要ローカルに投入される時は、ファーストクラス席はクラスJに開放される)、使い勝手が悪い。まあその路線に乗ったクラスJの中の一部旅客はファースト席に乗れて満足ではあろうが、幹線で8000円払って乗っている客の立場からはうれしくないので、極力そういうローカル運用は避けているようである。
だから、767の次がいきなり500人近い定員の777-300になってしまうのである。
最近では羽田~伊丹が全便ファーストクラス付きの777-200だったのを止めて、ファーストクラスを千歳線や福岡線に回しているが、その代替に伊丹線でA300が活躍している。幹線でもA300は使い勝手がいいのだろう。
(旧JAS時代には、幹線は原則777-200だったので、羽田伊丹線ではあまり見なかった)

第二の問題点は、767-300では搭乗時にドアが一つしか使用できない点である。A300は二つ使用できるドア配置になっており、777や747と同レベルの利便性を提供している。ワイドボディー機とは言っても搭乗するドアが一つだけの767は必ず搭乗中にブリッジ内で旅客が詰まる。その間、中途半端な場所で待つ不快さは結構大きいものがあるし、搭乗時間もかかって定時運行に悪影響をもたらす。定員が150人も多い777の方が明らかに搭乗時間は5分ほどの単位で違う。(767の便がうんとガラガラなら話は別だが)

第三の問題点は、767の方が古い機体が多い点である。JALの国内線用767-300は二段階に導入されており、初期に導入した機体は1980年代後半に導入した機体であり、エンジンも後期型とは異なる(747クラシックと共通のプラット&ホイットニーからGEに乗り換えた)。普通席の座席も更新されておらず、国内線普通席の座席の交換を(資源の無駄としか思えないほど)繰り返すANAに比べて旧態依然ぶりは明らかである。モケットの張り替えなどはしているのだが、初期の767の機内に関して素人には古さしか見えない。これに対してA300-600Rは一番古くても1991年導入で、JJ統合後にA300B2/B4の代替のために無理にエアバスに2003年ころに生産させた機材も混じっている。

第四の問題点はA300やMD90が中古市場で売り物にならない点である。これが5年ほど前から市況が変化した点である。A300については貨物機としての用途はあるが、大して高くは売れないだろう。
高く売れないものは使い倒すしかないのが、航空界(普通の中古の乗用車でも)常識である。KLMだって売り物にならないMD11の売却は止めて、最新型の777並に機内設備を改修することとした。JALのDC10-40を長持ちさせた過去の経営判断はそう誤っていなかっただろう。
極端な例を挙げれば1990年代のノースウェストの国内線機材運用である。リパブリック航空などからの引き継ぎ機材ながら事故のあったMD87以下のMD80系列は早々に売却してしまい、世界中からタダ同然で1960年代製のDC9を300機も買い集めた例である。これらの機体は50年使用を念頭に置いて、A320並にオーバーヘッドストレージなどを大型化するなどの改修工事をやったので、利用客には古さはばれなかったし、最新機材に比べたデメリットもなかった。

第五の問題点はA300引退の直接の代替機材がないことである。737-800などで小型化して置き換えるしかない。輸送力の縮小で旅客単価の向上を図るのは金融家的発想である。
だいいち、修学旅行とか大口の輸送は逃してしまうし、団体客の需要そのものが小型化で消滅してしまう。JALの富山空港撤退と小松線機材縮小で、首都圏からの北陸方面の航空機利用の団体ツアーは殆どなくなり、バスか新幹線(上田で観光バスに乗り継ぎ)利用となった。
そもそも日本人は小さい飛行機は嫌い(飛行機に慣れない人ほど、小さな飛行機は危ないと思っている)だし、ナローボディー機ではビジネス客まで離れてしまう。現状でもANAが767を無理に飛ばしている大阪、名古屋発の便は多く、JALと差を付けている。

確実なJAL再生計画は結構だが、航空事情に無知な金融機関向けのパフォーマンスは止めるべきだ。まあ金融機関の担当者だって航空界の知識がないのに、目に見える再建策を提示させないことには自分の首が危ないだろう。
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