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羽田は国際ハブ空港には簡単になれない [空港]

またも前原は軽い発言をしたものだ。言うは易いが、実現は簡単ではない。
私もこれまでのしがらみにこだわったり、成田への配慮などはする必要はないと思う。成田市長などの抵抗は、関空開港時の伊丹廃港論への反対や八つ場ダムへの地元の反対と同じで、地域エゴそのものである。
羽田が国際ハブになれるなら、なればいい。そうなったとしても、ロンドンのヒースロー空港とガトウィックの棲み分けのように、成田の存在意義がなくなるわけではない(ただし世界有数の警備体制は合理化する必要があろう)。
だが、羽田を国際ハブ空港とするまでの物理的障害は多い。どうやら滑走路さえあれば国際線の飛行機は飛べると、前原やマスコミは安易に思っているらしい。

まずは国際ターミナル設備の問題だ。来年開業予定の新国際線ターミナルビルも、世界水準で見れば狭隘なターミナルである。
http://www.tiat.co.jp/terminal.html
ターミナルビル(供給処理施設棟を含む)
延床面積 約159,000平方メートル
階層 地上5階建
固定スポット数 固定スポット数 10スポット
オープンスポット数 10スポット

何より固定スポット、すなわちPBB搭乗橋が着けるスポットが10カ所(小型機だと分けられるらしいが)しかないというのは、ハブ空港として小さすぎる。
世界的なハブ空港はヒースローでもアムステルダムでも、パリでもシンガポールでも仁川でも60~100基程度というのが共通水準となっている。
成田空港は第一ターミナルと第二ターミナルをあわせて68基と、少ない。が、これは全てのスポットに747が着けるように相当の余裕をもって配置しているためで、香港と同レベルである。香港が国際ハブ空港でないとか、設備が貧弱だという人はあるまい。仁川空港は昨年かにサテライト(自国のKEとOZ以外の外国航空会社を露骨に隔離しただけだ。このように海外航空会社を相対的に不便にしているという事実だけで、仁川が国際ハブでないことは明らかだ)ができるまでスポット数では成田と同等以下の設備だった。仁川も全てのスポットに747クラスが着けられるわけはない。
羽田空港の新ターミナルはいかにも小さい。といって、あまり増築の余地もないのである。

まあ多くの飛行機は沖止めとするとして、スポット数は何とか解決できよう。第二ターミナル開業以前の羽田の国内線も同様だった。沖止めと言えば、熊本、鹿児島、小松、広島あたりの高需要ローカル以外、当時はそうだった。
ロサンゼルスのトム・ブラッドレー国際線ターミナルも、10ほどしかPBBがない(NWやUAなど、アメリカの航空会社は自社のターミナルに国際線到着設備があるので、そっちに逃げているが)。パリのCDG空港も2Eターミナルの広大なサテライトが開業するまで、殆どのAFエールフランスの長距離国際線はバス搭乗だった。この点はCDGでも旧いが未来的なデザインの壮大な第一ターミナルの方が恵まれている。(もっともCDGの第一ターミナルは当初の成田の第一ターミナルと同様にB707、DC8クラスが前提になっているので、747や777 、A340など大型機に対応した設備ではない)
欧州の格安航空が利用する大空港のターミナルや不便空港もPBBは殆ど使わないが、アジアやアメリカの常識からはかけ離れている(ただの大手レガシーキャリア優遇にすぎないけど)。だいたいバリアフリー化は沖止めでは無理である。欧州信者は欧州の旧い駅や地下鉄にエレベーターやエスカレーターの整備が遅れていることを指して
「欧州では障害者や高齢者に対して社会が温かく迎えているから、エレベーターなどなくても周りの人が直ぐに車いすにかけよって、大勢でかついでくれる。」
なんて、設備の不足を棚に上げた理想論を述べていたが、ドイツでもフランスでも急速に駅の改装は進んでいる。格安航空の空港だけが「安かろ悪かろ」で遅れているだけだ。

最大の問題は入出国設備やチェックインカウンターなどのスペースが不足する点である。成田だと第1ターミナルだけで延べ床面積が45万平米もある。羽田の3倍である。第2ターミナルは開業時にその巨大さが日本国内で話題になったほどで、30万平米ある。
いかにも羽田の新ターミナルは手狭である。
このまま国際線を増やせば、成田が第一ターミナルだけだった時代や、国際線も羽田だけだった時代の阿鼻叫喚の混雑が再来することになろう。

しかも現代では単に客に我慢させるだけでは、済まない時代である。一言で言うとテロ対策のための手荷物検査の増加、出入国管理の厳格化の問題である。
それには広大なターミナル面積を必要とする。

それに世界で標準的な空港のターミナルの構造も当時とは異なっている。第一ターミナルが改装される以前は入出国の経路が全く分離されておらず、飛行機を降りると搭乗客の待合いロビーに直接出る構造だった。羽田の国内線第一ターミナルや伊丹空港と同じ構造である。これだと空港ターミナル内を大部屋状にでき、詰め込みがきくが、テロ対策では不利である。
アムステルダムやシンガポール、ウィーン(こちらはだいぶ小規模)あたりが、ハブ空港では唯一、そのような構造をとっているが、それは国土が狭隘で産業が限られるオランダやシンガポール政府が、ハブ空港を国策としているからである。
その代償として国際線(欧州では非シェンゲンエリア)の各搭乗口ごとに手荷物検査機を置いて、空港運営に多大なコストをかけている。
先進国民だけを対象とすればいいかもしれないが、中国便がメインの羽田の国際線ではそのような体制は無理である(私は顧客重視の立場からは、そちらの方が乗り換えや買い物なども便利でいいと思うが)。

まあ政治決着で無理矢理、羽田をハブ化すれば、事は急を要する。その場合は新国際線ターミナルに加えて、国内線ターミナルのどちらかを国際線用に供出することになろう(2chの航空板の過去ログのどこかにこのネタはあったと思う)。出発到着の分離された第二ターミナルとなろうが、国内線の犠牲は大きい。
その応急策にしても、出入国設備の設置場所、免税店や国際線ラウンジのスペースなど大規模な増改築が必要となるだろう。成田の第1ターミナルや伊丹の旧国際線部分(今のANAの部分)の改装工事を見れば分かるように、かなりの期間を工事に要するだろう。
それをやるくらいなら、モノレールを第四滑走路方面に延伸する形で、今のエプロンあたりに国際線用の第4ターミナルを建設した方が早い。

ターミナルの新設を含めた、やや妄想的な大規模な再拡張案も運輸政策研究機構から出されている。
http://www.jterc.or.jp/pdf/090924_gaiyou.pdf
が、大規模な埋め立てを伴い、大車輪で工事を進めても10年以上は要する大計画である。ここまで海側に大規模に拡張しては、漁業権や航路確保もただごとでは済まない。埋め立て直後の超軟弱地盤の上の第1ターミナルビルの建設が世界に冠たる難工事だったことを知らないような議論である。第2ターミナルがそれほど苦労しなかったのは20年近く土地を寝かせて、地盤の安定を待ったからである。
この拡張計画は京王線を橋本まで、小田急を相模大野まで、中央線を立川まで複々線化せよと言うのと同等のマニアの妄想レベルである。役所系の計画案としては極めてお粗末で、工費も工期も考慮されていない。
これだけ交通に金をかけるなら、日本でやるべきことはいくらでもある。
金でひたすら解決しようとしても、兆単位の工費となろう。今の民主党政権にそこまでの心構えがあるとは思えない。

エアライン板の参考スレ

首都圏の航空事情
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/airline/1239692761/



前原国交相:羽田をハブ空港に転換 第4滑走路完成を機に
2009年10月12日 14時57分 更新:10月12日 17時45分

羽田空港で建設が進む4本目となるD滑走路(手前)=本社ヘリから手塚耕一郎撮影 前原誠司国土交通相は12日、羽田空港について「首都圏空港を国内線と国際線を分離する原則を取り払い、24時間(稼働する)国際空港化を徐々に目指していきたい」と述べ、第4滑走路が来年10月に完成するのを契機に、羽田を国際拠点空港(ハブ空港)とする考えを示した。国際線が発着する成田空港は「航空需要の増大を見据えて有効活用する」としたが、具体案は示さなかった。大阪府泉佐野市で同日開幕したアジア太平洋航空局長会議の開会宣言後、報道陣に明らかにした。 前原国交相は、日本の航空行政の問題点として、国際線が集結し、国内の各空港に乗り継ぎできるハブ空港が存在しない実態を指摘。「国内線と国際線が分離され、結果的に日本のハブ空港は(韓国の)仁川(空港)になっている」と述べ、ハブ空港整備が必要との考えを強調した。都心部に近く、第4滑走路が完成して発着回数が大幅に増える羽田を24時間稼働する国際空港にすれば、既存施設を利用してハブ空港として整備できると発案したとみられる。 羽田の国内・国際共用化を巡る議論は、森内閣時代に扇千景国交相が主張。その後、羽田からソウル(金浦)、上海、香港空港への定期便も就航したが、成田が開業した1978年に成立した「羽田は国内線、成田は国際線」の原則は基本的に維持されてきた。 来年には都心と成田空港間を30分台で結ぶ成田新高速鉄道が開業するなど、成田の利便性向上に向けた取り組みも進められており、前原国交相の「羽田24時間国際空港化」発言に成田を抱える千葉県の反発が予想される。また、羽田は騒音問題などから発着回数増に限度もあり、ハブ空港化の論議はさまざまな波紋を呼びそうだ。【清水直樹】


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きりん321

jalの不採算路線廃止にしても羽田空港の国内線をさらに集中させることが前提なはずです

また羽田の第4滑走路に向けて国内各社は小型化を進めているはずです、

その前提を1年前に急に帰るというのはいかがなものでしょうか

思いつきか何かで言ったとしか思いません

羽田のハブ化は発着枠が足りません

成田空港の国内線充実、羽田空港の国際線充実で成田の羽田を最大限有効活用するといえばいいところを思いつきか何かで言ったとしか思いません
by きりん321 (2009-10-13 13:15) 

しまふくろう

滑走路やターミナルのキャパシティよりなにより、
「地域住民」の声がある限り24時間稼働のハブ空港は無理ではないでしょうか。もっと大局からの声が欲しいとことですがまあ、無理なのでしょうか。
 また覗きに来させてください。
by しまふくろう (2009-10-14 16:06) 

香港人 

あなたは、成田に反対して、有罪となり、生涯犯罪者として生きていった人が、これから羽田を国際化すると政府が宣言したら、
彼らの人生はなんだったのかと思いませんか?

by 香港人  (2010-10-23 10:06) 

阿鼻叫喚大いに結構

羽田しかなく、激しい混雑で阿鼻叫喚大いに結構。
羽田が便利なら、それで良い。利用者も我慢する。
それが過去現在未来、一貫した潮流です。
by 阿鼻叫喚大いに結構 (2013-10-08 05:22) 

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