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トカラ列島の日食騒動とクルーズ船 [海外事情]

あれだけ高価な30万円以上ものツアー料金を取ってまで、各島は受け入れ体制を整備したわけだ。
が、受け入れられたのは悪石島で1000人程度に過ぎない。雨で観測できなかったのだから、誰も得をしなかった。島に積極的な経済効果があったわけではない。
トカラ列島が日食の中心で、今世紀最高の日食を観測できるのは事実だろう。だが、ホテルなどの収容力が圧倒的な中国の上海や杭州でも、日食は観測できた。(中国も雲で見えなかったが)

結局、一番得をしたのは小笠原近海で、チャーター船の「ふじ丸」から観測した人たちだったよう。トップツアーのチャーターらしい。船ならば晴れた所を求めて移動できるから、こういう時に好都合である。
問題はこういう時、日本には使えるクルーズ船がチャーター専門の「ふじ丸」しかないことである。定員は600人、実際には各室2人で300人程度しか乗れない。
いまどきの巨大な世界のクルーズ船では、子どものような存在である。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%BA%E5%AE%A2%E8%88%B9
アメリカのカリブ海で巨大化が進んで、ロイヤルカリビアンクルーズが16万トンのフリーダム級に次いで、22万トン級のオアシス級が竣工しそうである。オアシス級の収容人数は5000人を超え、部屋の数は2000室を超える。ギネス級の巨大ホテルそのものである。巨大化は欧州でも進んでおり、MSCクルーズやコスタクルーズなどは10万トン以上の巨大船をここ数年であっというまに主要ルートに就航された。
郵船クルーズの「飛鳥Ⅱ」は5万トン級とそれなりの規模である。が、日本海の2万トン級フェリー(国内船舶のトン数は国際船の半分程度に換算される)と変わらないサイズだし、クリスタルハーモニーの改装による、厚化粧にすぎない。世界のクルーズ船業界では1990年ころの船など、バルコニー付き客室も少ない老朽船である。
(老朽船すきもピースボートまで行くと感心する。世界中から客船マニア垂涎のボロ船をチャーターする能力はすごい。)

本来は日本近海に10万トン級のクルーズ船が常時10隻くらい配船されていて、毎週小笠原クルーズや奄美クルーズなどに出発しているのが当然である。それができないのは、日本のクルーズ市場がバブル期に比べて縮小しきっていて、新しい船を導入できない現状だからだ。昔はホーランドアメリカやキューナードのクルーズ船も普通の日本人が乗っていたのである。
こういう日食観測にこそ、世界の巨大クルーズ船を借りればよかった。そうすれば島の受け入れの心配も要らないし、雲で見損ねる心配もなかった。そうはいかないのが日本経済の深刻な地位低下が窺われる。だいたいバブルの時期には横浜の博覧会の間、クイーンエリザベス二世号を横浜港につなっぎぱなしにしたりしていたのである。そんな贅沢はいまでは不可能である。当時の日本の政財界が世界に対して持っていた影響力を物語っていたのは、オリエント急行の日本到来だけではなかった。

奄美諸島やトカラ列島、小笠原こそクルーズ船の定常ルートに適している。カリブ海の島くらいは見るものはあるし、小笠原などは北硫黄島、孀婦岩、須美寿島などの異様な島形などは、かなりの観光資源なのに、普通は見る機会がない。
カリブ海やエーゲ海などの寄港地に行けばわかるが、クルーズ船の経済効果は離島では恐ろしいほどである。金持ちが3000人ほど毎日のように人口わずかな島に降り立つのである。ギリシャの島々などはこのおかげで、日本をはるかに上回る金持ち島になった(そもそもギリシャの一人あたりGDPが2007年には日本を超えたことは知られていない)。
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