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教員免許論 [教育]

ひとこと
「文系学部卒業で持っていないのは、どこかおかしい。人生を軽く見ているか、怠惰そのものだ」

(
理系の人には断っておく。高等師範に起源を持つ一部の大学の理学部や数学科、理論物理学(浮世離れした世界ということ)などを除くと、制度上は教員免許の取得が可能であったとしても、専門学科のカリキュラムの中で、教職を取ることは実質的に顧慮されておらず、実験などの都合で教職科目の履修は現実問題として困難であるケースが多い。その場合は別である。以下の文章は人ごととして読み飛ばしてほしい。)

もちろん、資格を取ったからといって、実際に中学高校の教師になるかどうかは別の問題である。
大学を卒業して免許状を取っても、殆どの人間は普通に就職、進学する。
だが取ったことを後悔している人間はまずいない。ペーパードライバーでも、運転免許を取るために教習所へ通ったことを後悔する人間がいないのと同様である。逆はあっても、である。
運転免許に比べたら、それは少数ではあろうが、大学在学中に取らなかったことを後悔し(ないしは在学中ながら、必要科目を取り始めるタイミングを逸して)、通信制で取り直したり、時に大学一年生からやり直す人も多い。(中学高校の場合は3年生から取り始めることも多くの大学で不可能ではないが、就職活動なども考えると難しい面もあろう。)
そういった場合の追加コストは莫大である。人生の中の時間価値をも考え合わせれば、さらに経済的損失は拡大するだろう。
だいたい大学1年の時から計画して履修すれば、教職に必要な科目を履修したからといって、著しく大学の授業の負担が増えることは少ない。文系ならば、大抵の大学の学部学科では卒業のための必修科目とは別でも、卒業単位に算入されるのが殆どである。
英文科以外の人間が英語科の教員免許を取ったり、2つの教科の免許を取得したりするケースは別だが、それは知的好奇心豊富な学生が貪欲に専門以外の分野の講義を履修したりするケースと同様であって、当人の人生の中で有用な知識経験を得ることができよう。日本の大学では副専攻という概念は一部の先進的な大学・学部を除いては一般化していないが、世界(欧米どころか、韓国中国でも)の一流大学のインテリの間では複数の分野に通じていたり、複数の学位を持っていることは普通であり、高く評価されはしても、日本のように否定的な意味で捉えられることはない。

時に進学校などではカリキュラム編成の実利的な問題として、実習生が授業をする期間を嫌がる向きはないわけではないが、卒業生が母校で授業をすること自体を損害と思う中学・高校の関係者は皆無である。あまり底辺大学の場合は別だろうが、上位の大学であればあるほど、教職課程の担当者は卒業生に教員免許の取得者が増えることを歓迎している。私が知る限り、大学関係者は全て、卒業生が教員にならなくても、社会に教員免許の保有者が増える(この表現は免許更新制の導入で微妙になったが)ことは歓迎すべきこととして捉えている。
この手の意見を世間一般、ネット上で見ることは希なので、やや詳しい説明が必要であろう。
だいたい、実際の大学の授業で所期の目的が達せられているかは別として、教員免許に必要な履修科目は極めて高い理想の元にバランス良く配置されており、教育基本法の理想を実際的に体現している。近年になって強調されるようになったリベラルアーツの概念は、日本の大学教育の中で拙速な専門教育の優先傾向に遮られて、明確に「教養学部」などを名乗る一部の大学学部などを除いては、十分に日本で普及することはなかったが、教職の必要科目の中では昔から立派に実現していたと言って良い。それだけ戦後の教員の制度が先の戦争と近代天皇制の体系の反省の下に構築されたかを表している。
教育学が(ことに学問の方法論の点で)独立した学問として、日本国内の常識ほど世界的に確立した学問であるかどうかは疑問だが(特に哲学の出来損ないの教育原論や、社会科学の劣化版の教育社会学など)、より積極的に捉えれば、教育学そのものを学ぶ教職科目は学問の総合として捉えることが可能だし、近年に加えられた介護実習や総合演習は評価すべきであろう。

実際には教科の専門科目は多くの大学の学部において、一般教養科目にも水準にも劣る、程度の低い「教職用科目」として行われていることは残念である。この点で、社会科において程度の劣る一切の教職用の科目を学生の便宜のために設けない東大の方針などは高く評価して良いと思う。そこにおいては、社会科学関係の科目の多くは文学部生も、法律学政治学などは法学部生の3割が落第する専門講義を履修しなくてはならないし、経済学も経済学部生に混じって履修しなければならない。

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