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九州ブルトレ全廃の背景 [鉄道]

ダイヤ改正前夜 「富士」「はやぶさ」廃止など夜行列車の思い出
http://bokukoui.exblog.jp/10552211/

あちこちでさんざん惜別の声や昔話が出ているが、どうして九州ブルトレの利用が減ったのかを冷静に分析した文章は少ない。どうして「北斗星」や「あけぼの」が残って、九州ブルトレが駄目になったかを考えてみる必要があろう。

第一に、既に全廃された関西発ブルートレイン群に比べても、設備が陳腐であったことが挙げられる。
新造のサンライズや「カシオペア」と比べるのは酷だが、20年近く前から半数が個室化された「北陸」にも、設備が劣る。寝てしまえば同じとの意見もあろうが、走行時間が8時間に満たない「北陸」が個室だらけで、15時間くらいも乗る九州ブルトレがB開放寝台だらけなのはおかしい。混雑していた時代ならともかく、ここ20年ほど全く設備の改善が見られなかった。
(食堂車の問題は措く。徹底的に欧州の夜行列車だって非連結のものの方が多いくらいだ。時代の流れといっていい)
何しろ評価に値するまともな設備は、B個室のソロくらいである。それさえ改造から20年もの年月を経て古びているし、たばこ臭い。
A個室シングルデラックスには、登場時から酷評されたオリジナルタイプのオロネ25型0番台(及び改造後のオロネ15)を最後まで使い続けた。
(複雑な14系・24系の全体像は、今ではwikiにまとまっている。)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%89%8424%E7%B3%BB%E5%AE%A2%E8%BB%8A
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%89%8414%E7%B3%BB%E5%AE%A2%E8%BB%8A
1両辺りの部屋数が多いため、横方向の余裕がなく、寝台幅も狭い。昼間の座席と寝台の転換機能もないため、「北陸」や「あけぼの」のシングルデラックスとは比較のしようもない。
別に新しく新車を導入しろと言っているわけではない。西日本持ちの「日本海」A個室(元は博多「あさかぜ」用)のオロネ25型300番台、「なは」・博多「あさかぜ」のB個室デュエットなど転用されずに、廃車もしくは放置されている車両がいかに多いことか。JR各社の会社の垣根の問題はあるが、寝台車の譲渡の前例がないわけでもない。

もちろん、2段のB開放寝台が駄目だという意見はあろう。だが世界的にはけっこう良い寝台設備である。
旧共産圏のソフトクラス、軟卧、二等寝台に相当する車両であり、2段B寝台はそれほど客観的に見てそれほど駄目な設備ではない。旧ソ連でも、これを上回る一等寝台は最上級の列車にしか連結されておらず、実質的に最高等級である。中国でも二人用の高包は限られた夜行列車にしか連結されていない。
欧州の6人クシェット(ほぼ20系3段寝台並の設備。ほとんど非冷房だから登場時の10系寝台並か?)とは比べものにならない快適さである。フランスの4人用一等クシェットやイタリアの新型4人クシェットに比べても、各寝台にカーテンがあるだけ日本のB寝台の方が上である。フランスの国内夜行だと、カーテンなしのB開放寝台に相当する1等クシェットが最高等級である。(国内専用のT2型寝台車の最後については私は知らない。誰か詳しい人は教えて)。スペインのタルゴや旧シティーナイトライン、オーストリア国鉄などの二階建て寝台車の4人個室に至っては、完全に日本のB寝台に負けている。
西欧のMU型寝台車など諸外国の個室寝台車と比べるべきはA個室のシングルデラックスであり、寝台料金も日本と欧州で似たようなものか、欧州の方が高い。円安で1ユーロ170円の時、1部屋で90ユーロのイタリアの旧型寝台車(T2型は知らないが、イタリアでもレアな存在なので除く。シャワー付きのエクセルシオールに至ってはイタリア国内運用でも125ユーロである)や100ユーロを超えるドイツ系の寝台車がどれだけ高価に感じられたことだろうか!!!

第二に、運賃施策を誤った点が挙げられる。B寝台に関しては客離れの原因は、殆どこれである。6300円という料金は中途半端に過ぎた。東京大阪など一部の大都市を除くと、東横インなどビジネスホテルのシングルルームと同レベルか、それ以上である。それに加えて特急料金が馬鹿にならない。国鉄時代以来の解釈では、冷房完備のブルートレインのサービスは特急に相当し、10系など雑多な編成の夜行急行とは隔絶された存在であって、合計で10000円近くにつく寝台料金と特急料金の二重加算は設備料金として当然のものとされた。
だが1970年代になってから昼行急行の殆どは驚くべき速度で冷房化され、夜行急行の寝台車も20系化、さらに国鉄末期には14・24系化された。こうなると設備料金の根拠は限りなく怪しい。
やや脱線して冷房の問題を考えたい。まあ最近では適用例があるのかどうかも疑わしいが、特急だと冷房が故障した場合は特急料金の払い戻しが受けられるが、急行普通車だと受けられない(旅客営業取扱基準規程第369条の3)。急行料金には速達料金は入っているが、設備料金は入っていない。ただし急行グリーン車の場合は話はややこしい。普通列車のグリーン車の冷房が故障してもグリーン料金は返らないが急行二等車の完全冷房化は1960年代後半のことであり、グリーン車制度の導入時に冷房の概念など制度変更が行われたようである。
20年近く前に寺本光照が著書で訴えたように、寝台特急という制度は廃止して、寝台列車として一括した運賃制度とし、実質的な値下げをはかるべきであったのである。(寺本光照『これでいいのか、夜行列車』中央書院・1990)

ただし価格面では国鉄改革以降はトクトクきっぷで頑張りが見られたことを忘れてはならないと思う。最新の三月号のJTB大型時刻表の1017ページに痕跡が残っている「往復割引きっぷ」の案内である。くしくも九州ブルトレの廃止に伴い、「寝台利用のきっぷは3月1日以降順次発売を終了します。詳しくはうりばの係員におたずね
ください」との太字の経過措置の案内が出ている。
最近になって、「のぞみ」の利用が可能になった以外、さんざんこの切符は改悪を重ねてきた。当初は東京発でも九州発でも32000円ほどで、B寝台で東京と九州各地の往復が可能だったのである。日本最長の夜行バスである「はかた」号の片道が15000円、往復が27000円であるから、かなり競争力のある運賃であった。さらに片道を「ひかり」のグリーン車、普通車利用とすることも可能であり、グリーン車で往復しても40000円程度の往復割引きっぷ(この運賃は今でも魅力的)と、片道ごとに寝台車との組み合わせが可能であったのである。
私が大学生になった2000年ころは、スカイマークなど新規航空会社の参入で国内線航空運賃の大幅割引が今以上に進んでおり、前日予約の東京~福岡の片道の実勢運賃は13000円から高くても18000円というイメージがあったので、この往復割引運賃にはあまり食指が伸びなかった。ソロを使えないというのはケチくさい気がした。
だがグリーン車との組み合わせには興味があったが、諸般の事情でこの運賃を使う機会を逸した。今から考えると、6時間ちょっとで博多に着く、100系グランド「ひかり」の2階グリーン車で博多行きなど、今では夢のようなことが可能だったのである。
のぞみ増発で山陽直通の速達100系「ひかり」が減っていったこと(「ひかり」に300系が入ってもスピードダウンした)、レールスターの誕生と同時に「グランドひかり」の食堂車の営業が終わったことなど、理由は多いが、ある段階で片道ごとの寝台車とグリーン車の組み合わせが不可能になったのが痛かった。次いでグリーン車用の設定がなくなり、(どちらが前か忘れたが)最後は九州発だけになった。
どうして航空機や高速バス対策に有効な割引きっぷをなくしたのだろう?
大手二社はたまにスカイマーク対策で閑散期の東京ー福岡線の特割7や特割1を1万円台後半に値下げするが、今や殆どの時は1週間を切ると片道27000円くらいを払う必要があるし、航空業界特有のきわめて長い春休み・夏休み・冬休み期間は福岡線の一切の割引がなくなる(ビジネスきっぷも繁忙期は値上がりするし、株主優待は万人向けではない)。往復4万円以下なら、価格面で十分鉄道に競争力はあるのである。


(あと2つの論点は後で)
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