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ロンドンヒースロー空港論1 [空港]

航空業界の制度は驚くほど一般に知られていない(旧の一般旅行業務取扱主任者になる場合は必要な知識)ので、順番に書いてみる。
基本的に国際線の路線免許というのは二国間協定に基づいており、双方の政府が同意した空港間の路線を両国の航空会社が同一の便数・路線を平等に運航するのが原則である。相手国から第三国の路線というのは相手の国の航空会社の権益をおかすことになるので、基本的には認められない。理由があって運航する場合でも、その区間だけの旅客は乗せることができないのである。途中の経由地で降りる客がいるからといって、代わりの乗客を乗せるわけにはいかないのである。無理に運航することもできるが、搭乗率も下がり、経営的に得策ではない。
ただし従来から権益を持っている限りはこの限りではない。そもそも昔は航空機の性能が限られていたので、ノンストップで運航できる距離が短く、政治的事情もあって長距離路線は途上国などに多くの経由地を持つものであり、昔は国際線の便数を少なかったので、せっかく外国の航空会社の便が寄航してくれるなら、自国の国民に、外国に行く際にはより多くの便を利用できるようにと、寄航地の国は、自国とその先の目的地への以遠権を与えることが多かった。その時期に獲得した権益を必死で維持している航空会社も多い。だが多くは直行便の増加で、権利を放棄してしまった。
有名なのは英米仏(特にUAとNW)の航空会社の以遠権である。日本とアメリカの航空交渉の大半はこれの問題に費やされているといってもいい。だいたい第二次世界大戦の戦勝国の3国は敗戦国のドイツと日本に対して再軍備を恐れて当初は航空便の運航を禁じたため、代わりに自国の航空会社に日本・ドイツから第三国への路線の運航権を与えるよう、占領政府に認めされたのである。具体的に得た航空会社は、アメリカではパンナム(全世界)とTWA(大西洋路線)、ノースウェスト航空(太平洋路線)であった。(他にBOAC英国海外航空、エールフランスも限定的ながら、同様の権利を得た)
国際線専業であったパンナムとTWAは航空自由化で経営が悪化し、順次路線の運航権を国内他社に売却していった上で、最後にはカスのような路線だけになってジリ貧になり、会社自体が消滅してしまった。残ったのはノースウェスト航空であった。
(これらの権益がどうなったかは、日本語では2ch航空板の初代パンナムスレがもっとも詳しい。)
ノースウェスト航空は、現在でも日本からの権益を存分に活用して、成田からだけ(これに加えて関空、中部からも)で実にアジア9都市に毎日定期便を運航しているのである。最近(2002年の暫定滑走路供用)までは成田空港の発着数はJAL、NW、ANAの順であった。今でも第一滑走路の発着枠はANAより多くを保有している。パンナムの権益もユナイテッドに売却され、こちらも多くのアジア線を日本から運航している。
しかも両社は新しいハブアンドスポーク方式を組み合わせた絶妙のダイヤを組んでいる。NWでいうと、毎日のことだが午後になると、日本の航空会社はそこそこにアジア各地から次々と飛行機が滑走路に着陸し、最もタキシーイング時間が少なく済み、チェックインカウンターから近い便利な位置の第一ターミナル第一・第二サテライトに着く。そこでアジア各地から日本までの乗客を下ろすだけでなく、9都市から来た乗客を相互に乗り換えさせ、日本からの乗客も乗せる。3時ころからアメリカ各地に向けて次々と離陸していく。提携・コードシェア先のCO・DLを含めると、実にアメリカ本土だけで10都市に乗り継ぎが可能である。今の技術では、これらのアジアの都市からアメリカの各都市におのおの直行便を飛ばすことも可能であるが、それでは90もの便を毎日運航する必要がある。それだけで搭乗機会が増加する。さらに、バラバラに運航した場合に比べて、柔軟に旅客数の増減にも対応できるのである。
これは究極のハブアンドスポーク方式である。

(次回でヒースローの話に移ります。)

(ソース)
http://www.cnn.co.jp/business/CNN200703220041.html
こちらも詳しい
http://jp.ibtimes.com/article/intl/070323/5544.html
EU、欧米間の大西洋航路を開放する協定を承認
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 欧州連合(EU)は22日、EUと米国の任意の地点間の航空路線を認める航空協定「オープンスカイ」を承認した。27カ国が満場一致で2008年3月31日に発効する協定の締結を支持した。

 承認内容には、EUで最も利用者が多いヒースロー空港を新たな航空会社に開放する時期を延ばしたいとする英国の要求が反映された。 現在、ブリティッシュ・エアウェイズ、バージン・アトランティック航空、アメリカン航空、ユナイテッド航空の4社だけがヒースロー空港・米国間の航路で運行する権利を持っている。同航路はEU全体の米国便の3分の1を占める高収益航路である。

 EU政府は、今後の協議で3年以内に米国からの譲歩を引き出せなければ、協定の一部実施を延期することができる規定も盛り込んだ。これによって米航空会社が欧州で新たに認められる権利が制限される。これを行使する可能性があるのは、米国が欧州の要求する譲歩を行わなかった場合にヒースロー空港の開放に反対するとしている英国のみだと見られる。

 ダグラス・アレクサンダー英運輸相は、「英国が米国の航空会社に対する現在の制限の一部あるいはすべてを2010年に再び課す権利を得られるように努力してきた」「これが必要とはならないことを強く望む。しかし、これは、我々が協定に関して早期に次の段階へ進むことを真剣に考えていることを米国に示す非常に明確なシグナルだ」と述べた。

 一方、ブリティッシュ・エアウェイズの最高経営責任者ウィリー・ウォルシュ氏は、米国がEUの航空会社に市場を開放しなければ航空路の開放を撤回するという姿勢を保つべきだと述べている。同氏は、EUはヒースロー空港を開放することで、既に最も価値のあるの交渉材料を譲歩していると述べた。また、「これまでのところ、米国は何ら意義ある譲歩を行っていない」「米航空会社はヒースロー航空や欧州に乗り入れることができるようになるが、米国は依然として欧州の航空会社が立ち入り禁止の領域で、外国資本の米航空会社への投資に対する制限も変わっていないままだ」と述べている。

 米航空会社は協定によってニューヨークからロンドンへ航行し、ロンドンで乗客を拾ってストックホルムに航行するといったことができるようになるため、欧州市場で競合することになる。しかし、EUの航空会社は依然としてアメリカ国内線で運行することができない。

 EU関係者は、米国が米航空会社の議決権株式の25%以上を外国投資家が保有することを禁じる規制を撤廃できなかったことに失望したと繰り返し述べている。EUは、規制撤廃を協定締結のための重要な前提条件としていた。ブッシュ政権は規制撤廃に取り組んだが、安全と雇用に対する米航空会社と労働組合の懸念から、支持を得ることができなかった。

 環境保護主義者は、協定によって航空便が増加するため、二酸化炭素排出量を削減の努力が無駄になると主張しているが、EUは、協定によって航空料金のコストが削減され、欧米間の航路で5年間に2,500万人の旅客増加が見込めるとしている。現在、同航路を利用するのは5,000万人以下。また、5年間で160億ドルの経済効果があり、欧州と米国で8万人の雇用が見込まれるという。



(03/23 14:41)

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